「グリーン車なのにギャン泣き」 芸能人投稿が新幹線「赤ちゃん泣き声問題」に――プレミア車両で「静寂」は絶対か

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新幹線グリーン車で赤ちゃんの泣き声が話題になっている。制度や車両の作り、料金の仕組みに問題があり、静かに過ごしたい人と子ども連れの移動の自由がぶつかる。こうした仕組みの欠陥は、地域の経済や移動のチャンスにも影響を与える構造的な課題を明らかにしている。

「静寂性」を前提にした交通設計の限界

新幹線(画像:写真CA)
新幹線(画像:写真CA)

 日本の公共交通は、1960年代の新幹線開業以来、静かさや集中できる環境、快適さを大切にして作られてきた。密閉された構造や遮音ガラス、リクライニングできる座席など、騒音を減らす設備も整っている。しかし、こうした設計は主にビジネス客を想定していて、家族連れや赤ちゃんを連れた人の移動は十分に考えられていない。

 近年、家族旅行や赤ちゃんを連れての移動が増えている一方で、主要な駅での授乳室やベビールームはまだ少ない。そのため、空間の設計と利用者の実際の構成にズレが生じている。この状況は、静かに過ごす権利と移動する権利のバランスが制度上うまく調整されていないことを示している。

 有料ゾーンが増えると、静かに過ごす権利が制度として強くなってくる。グリーン車やプレミアム車両では、

「追加料金を払った人は静かであることを期待する心理」

が働き、赤ちゃんの泣き声が規則違反のように見られることもある。しかし、これは親子の善悪やマナーの問題ではなく、共存を前提にしていない制度の結果だ。

 赤ちゃんの泣き声は、警報音と同じ周波数に近く、人の脳は危険の信号として認識する。そのため、誰でも本能的にストレスを感じやすい。問題は、そのストレスを減らすための空間設計や制度が十分に整っていないことだ。密閉された車両や逃げ場の少ない座席配置、狭いデッキなどが、泣き声を受け入れにくい環境を作っている。

 その結果、静かさを前提にした交通設計は、赤ちゃん連れや家族利用との共存を十分に考えていないことが明らかになる。空間設計と利用者の構成が合わないことが、社会的な摩擦や不快感の原因となり、利用者間の緊張を生む背景になっている。制度や空間、情報の整備が十分でないことが、感情的な議論に陥りやすい根本の原因になっている。

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