「550万人雇用」を救う“非BEV”の勝算――トヨタが仕掛ける「水素エンジン」という内燃機関戦略

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電動化が進む自動車産業で、トヨタは水素エンジンに挑む。国内550万人の雇用や既存技術を生かしつつ、モータースポーツで実証を重ね、名車AE86や商用車への応用も進める多様な脱炭素戦略が未来を拓く。

多様化する脱炭素戦略

水素ハイブリッドエンジン搭載の「ハイエース」(オーストラリア向け)(画像:トヨタ自動車)
水素ハイブリッドエンジン搭載の「ハイエース」(オーストラリア向け)(画像:トヨタ自動車)

 トヨタは商用車の水素化にも取り組んでいる。現在、オーストラリアの公道で実用化に向けた実証実験が行われており、現地トヨタ役員によれば、水素エンジンはディーゼルエンジンを置き換える存在として期待されている。

 トヨタが水素エンジン開発を本気で進める理由は明快である。カーボンニュートラルという大きな目標に向け、多様な道を用意することにある。水素エンジンは、既存の強みを生かしながら、未来の選択肢を増やせる技術だ。

 もちろん、水素には課題もある。製造時のCO2排出、貯蔵・輸送のインフラコスト、現時点でのエネルギー効率の低さは今後解決すべき問題である。しかし、トヨタは水素エンジンをBEVの対立軸とは見なしていない。むしろ、BEVやFCVと並走させることで、カーボンニュートラルへの道筋は確かなものになる。

 S耐やWECといったモータースポーツで磨かれ、AE86のような名車の再生や商用車への応用にもつながる水素エンジン技術。その先には、クルマ文化と産業を次の時代につなぐ、多様性に富んだ未来が広がっている。

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