「軽EV」市場に遅れて参入――ホンダ「N-ONE e:」は日産サクラの独壇場を崩すのか?

キーワード :
, , ,
周回遅れの参入か、それとも計算された布石か。日産「サクラ」が独走を続けてから2年。ホンダは軽EV市場に「N-ONE e:」を投入した。 表面的には静かな一手だが、単なる後追いではない。社会インフラの未来を見据えた、壮大な戦略が秘められている。

日産・サクラから2年

Honda N-ONE e:(画像:本田技研工業)
Honda N-ONE e:(画像:本田技研工業)

 本田技研工業(ホンダ)は、軽自動車規格の新型EV「N-ONE e:」を2025年9月11日に発売した。既存の「N-VAN e:」とあわせ、四輪電気自動車(EV)は2機種となる。軽EV市場では、日産「サクラ」が2022年6月に登場して以来、長らく独壇場だった。そこに約2年遅れてホンダが対抗馬を投入した形である。先行メーカーに比べると遅い印象もあるが、ホンダ全体の戦略を考えれば、新エネルギー車両への布石は計算された一手であることが分かる。

 ホンダは国内3大メーカーのなかでも、

「最も事業領域が広い総合モビリティメーカー」

である。一般に知られる自動車や二輪車では、フィットやスーパーカブが代表的商品だ。しかし農業機械や船舶、航空機に至るまで、鉄道を除くほぼ全てのモビリティ分野を網羅している。

 技術開発にも積極的である。航空機はその象徴であり、四輪車ではF1への挑戦が技術力の象徴となっている。航空機もF1も、世界最高峰の技術力がなければ戦えない領域である。ホンダは常に技術力を磨き、自社のクオリティを高めることで製品の質を強化し、人々の生活に寄り添う製品群を展開している。

 世界は減速気味とはいえ、脱炭素化の途上にある。四輪車における脱炭素化の象徴は、EVである。2022年10月、欧州連合(EU)は2035年以降の内燃機関車販売禁止を決定し、世界の自動車メーカーに激震を走らせた。現在は方針を転換し、条件付きで販売を認めるが、この決定を契機にEVへの投資と開発が急速に進んだ。

 ホンダはそれに先立ち、野心的な目標を掲げていた。2021年10月、2040年までにエンジン車の販売を終了すると発表している。2025年現在、この目標は撤回されておらず、全電動化への方針は継続中である。

全てのコメントを見る