三菱自動車「販売規模1.5倍」計画は成功するか? デリカミニに託された「女性・ファミリー層」攻略の命運
軽EV戦略の新展開

三菱自動車は、30~40代のファミリーや女性層の開拓を商品・顧客戦略の柱とする。軽SUV「デリカミニ」は、この層のニーズに応える車種だ。しかし、公共交通の脆弱な地域では、運転を余儀なくされる層への配慮も必要である。免許返納の流れはあるが、高齢者の運転ニーズは依然として残る。
高齢者が重視するのは、安心・安全機能やシンプルなユーザーインタフェースだ。これは運転が苦手な主婦層のニーズとも重なる。子育て世代の経済状況を考えると、カーシェアやサブスクなど柔軟な利用モデルの投入も欠かせない。最近では、軽タイプをタクシーに導入する事業者も現れており、タクシー事業者向けの車両開発も選択肢となる。
技術面では、i-MiEVで軽EV市場を開拓し、アウトランダーなどで培ったPHV技術を活用できる。これらの低公害車技術を軽市場に応用し、ユーザビリティの高い車両を提供する新境地の開拓が期待される。高齢者や子育て世代、外国人なども支援できる運転支援・安全支援システムの投入や、デジタルサービスによる差別化も可能である。
EV導入の補助金やカーボンニュートラル政策は軽EV普及を後押しする。こうした制度や政策を活用し、状況打開に結び付けることも重要だ。市場規模拡大には、他事業者との協働も有効である。他メーカーとの技術提携、特にEVプラットフォームの共有はコスト削減に効果的だ。中国勢など海外市場との協働も、ノウハウ獲得やコスト圧縮に寄与する。
こうした事業展開の波及効果として、ディーラー網を活用した販売増や雇用維持が期待できる。並行してDXを活用した効率化も必要だ。高齢者・子育て層向け市場の開拓により、移動弱者支援という社会課題への貢献も可能となる。
さらに、タクシーなどの公共交通での活用により、EV化によるエコデザイン推進や事業者の燃料コスト削減も見込める。軽自動車サイズでの新しいモビリティシナリオも描ける。EVやシェアリング事業の普及は、自動車産業全体の競争構造にも影響を及ぼす。