現場ディーラーを追い込む「不当ノルマ」──ハーレー2.1億円課徴金から考える「台数至上主義」の黄昏
公取委がハーレーダビッドソン日本法人に課徴金2億1000万円超を命じた。38ディーラーの3割が自社登録に依存し、在庫圧力や廃業が連鎖。二輪市場の構造的問題は自動車業界にも波及しうる。
販売ノルマ依存の末路

米国発祥の老舗ブランド、ハーレーダビッドソン。その日本法人が公正取引委員会から独占禁止法違反に基づく課徴金2億1000万円超を命じられた。違反の根拠は「優越的地位の乱用」、すなわちディーラーに対して一方的に過大な販売ノルマを課し、自社登録を強いた点にある。
公取委の調査によれば、対象となった38ディーラーのうち、違反期間中に販売実績の約3割が自社登録、すなわち
「社長や従業員名義での購入」
に依存していた。これは本来の市場需要を反映していない見せかけの販売であり、在庫回転率の悪化、資金繰りの逼迫、そしてディーラーの廃業という連鎖を招いた。実際、東京都内のディーラー社長は「この1年で廃業の店が何軒も」と証言している(『NHK』2025年9月18日付け)。
この数字は一過性の不正ではなく、販売網全体に制度的な歪みが存在したことを意味する。
「ノルマ未達 = 契約解除リスク」
という構図は、弱い立場の小売事業者を事実上、強制的なリスク負担に追い込む仕組みである。
今回の事例は二輪市場で起きたが、四輪業界でも構造的に同じ力学が働きうる。
自動車メーカーもまた系列販売店との契約に基づき、年間販売台数や新車導入計画を示す。仮に販売店が十分な交渉力を持たなければ、過剰な仕入れを強いられ、自社登録や過剰在庫を余儀なくされることもある。国内大手メーカーであっても販売台数至上主義が続けば、在庫圧力が市場価格を歪め、消費者は「新古車」という形で安価に購入できる一方、販売店側は赤字を背負うことになる。
この構造は、最終的に市場の健全性を損ない、ブランド価値を下げるリスクを抱えている。数量の押し付けによる販売拡大は一時的に台数を稼げても、中長期的には市場縮小と販売網の疲弊につながる。