軽100kg減の衝撃! スズキの超軽量化戦略は「聖杯」か、それとも「パンドラの箱」か――EV時代の試練を考える
スズキは2030年に向け、現行比100kgの車両軽量化を軸とした新技術戦略を発表した。燃費向上や加速性能改善に加え、インド市場での小型車競争力強化や社会課題対応を目指す、総合的モビリティ戦略だ。
設計転換による軽量戦略

スズキは伝統的な開発思想を継承し、顧客目線で価値ある製品づくりを重視している。モノづくりの根幹には「小・少・軽・短・美」という行動理念があり、軽量化戦略は創業以来のDNAともいえる。
国内では人口減少により自動車市場は縮小している。一方で、グローバル市場では差別化戦略が求められる。インドや東南アジアでは、小型で低価格の車の需要は安定している。
他社はスポーツタイプ多目的車(SUV)など大型・高価格車へのシフトを進める。そのなかでスズキが独自路線を貫けるかが、今後の成否を左右する重要な要素となる。軽量化目標の達成は、差別化戦略の先兵としての意味を持つ。
スズキは、当面の軽量化目標である100kgに対し、現時点で80kgの目処をつけている。内訳は部品軽量化50kg、構造進化20kg、仕様見直し10kgである。
さらに将来的には120kgの軽量化も視野に入れており、会見でその可能性が示された。この実現にはボルトや樹脂部品のさらなる軽量化が必要で、レイアウト設計の最適化など細部に至る徹底した検討が欠かせない。
加えて、エンジンや駆動系との一体開発も求められる。モジュール化により部品数を減らし、設計思想の抜本的な転換が必要となる。
EVに関しては、軽量化と電動化の両立に向けた開発リソースの配分も課題であり、今後いかにしてリソースを確保するかも解決すべき重要課題となる。