軽100kg減の衝撃! スズキの超軽量化戦略は「聖杯」か、それとも「パンドラの箱」か――EV時代の試練を考える
スズキは2030年に向け、現行比100kgの車両軽量化を軸とした新技術戦略を発表した。燃費向上や加速性能改善に加え、インド市場での小型車競争力強化や社会課題対応を目指す、総合的モビリティ戦略だ。
部品削減とコスト効率化

車両の軽量化で最も期待されるのは燃費効率の改善だ。軽くすることで走行に必要なエネルギーが減り、燃費や電費が向上する。結果としてランニングコストは下がり、環境負荷の軽減にもつながる。
加速性能の向上も見込まれる。軽量化によって出力効率が上がり、走行はより軽快になる。特に高速道路や坂道では、その違いをユーザーは実感できるだろう。走行性能の改善は、商品力の強化にも直結する。
軽量化を追求すると、部品点数の削減や材料の置き換えによる製造コスト低減も可能だ。新素材の活用は、生産効率向上や軽市場での新たな差別化にもつながる。
小型車や軽自動車は価格競争が激しいため、軽量化は競争力を高める施策となる。他メーカーがEVシフトを優先するなか、スズキは軽市場での差別化を着実に進めている。
一方で、軽量化にはリスクもある。材質を変えることで車体の剛性が下がる場合がある。素材を薄くすると衝突安全性に影響が出る可能性があり、基準を満たす技術的ハードルは高くなる。安全性を損なう軽量化は、本末転倒となりかねない。
軽量化を追求しすぎると、質感が下がる懸念もある。遮音材や内装を薄くすると、走行中の騒音や振動が増え、快適性が損なわれる。その結果、顧客維持や新規獲得につながらず、商品力の低下を招く可能性がある。
さらに、軽量化できる領域は限られており、行き詰まる可能性がある。軽量化は安全規制や環境規制との制約とも関わる。制度上のハードルをどうクリアするかが、取り組みのカギとなる。