LRTは単なる交通手段ではない? 宇都宮が実証した「地価11%上昇」、経済効果810億円を生む「公共交通指向型開発」の正体
開業から2年で利用者1000万人を突破した宇都宮LRTは、渋滞解消と沿線地価11%上昇をもたらす「ネットワーク型コンパクトシティ」の中核。公共交通と都市開発を融合させた地方都市の新モデルとして全国の注目を集める。
地方都市を変えた路面電車

開業からわずか2年で利用者が1000万人を突破した宇都宮芳賀ライトレール線は、国内で75年ぶりに新設された路面電車である。なぜ地方都市の宇都宮で「奇跡」と呼ばれる成功を収めたのか。まちの未来を変える「公共交通指向性開発(TOD)」の全貌と今後の展望を探る。
宇都宮LRTとも呼ばれるこの路線は、JR宇都宮駅東口を起点に、芳賀町の芳賀・高根沢工業団地までを結ぶ。全長約14.6kmの区間に19の停留場を設置し、市中心部と清原工業団地や芳賀・高根沢工業団地などの主要な工業地帯を結ぶ重要な「背骨」の役割を担っている。
開業以来、宇都宮LRTの利用状況は当初の予測を大きく上回り、好調を維持している。平日の通勤・通学利用はもちろん、休日の利用も高く、地域の新たな足として定着しつつある。2025年8月20日には、開業から2年を待たずに累計利用者数が1000万人を突破した。
さらに、LRT開業は沿線地域の移住者増加や住宅地の地価上昇といった波及効果も生み出した。公共交通を軸にしたまちづくりの成功例として、全国から注目されている。JR宇都宮駅を横断し、西側へ延伸する計画も進行中だ。
開業わずか2年で宇都宮LRTは地域の「足」となった。背景には、都市計画と交通政策が一体となった戦略的な取り組みがあった。地方都市が学ぶべき成功モデルとして、今後の展開も注目される。