トヨタ「曲がり角」の現実──日本の新車販売286万台、ディーラーはなぜ「下請け化」したのか?
					日本の新車販売は1990年の598万台から2024年には286万台に半減。EVやコネクティッドカーの時代に、元ディーラー経営者・小栗成男氏が「メーカーとディーラーの原点回帰」を提言する。				
				
				企業を支える利他精神

終章で示された「リーダーとしての利他の精神」も忘れてはならない。長期的に社員を見守り、育て、次世代に継承することが重要である。小栗氏は祖父の虎之助氏にそれがあったと語る。
実際、ディーラーは経営者層が世襲で継承することで、短期利益だけでなく、自社や業界の将来についても真剣に考えていた。
「株主の意向に沿って任期を務めるだけのサラリーマン社長」
には、業界の長期的課題は敬遠されがちである。「人(社員)を大事にする」という精神は、利他の精神であると小栗氏は説く。祖父虎之助氏の
「人を使うには使われる身になること」
「当社には経営者もいない。全員が労働者であり、仕事の分担として私が経営をしている」
という言葉は、かつての日本的経営の理念を示すものである。小栗氏は現在、NTPグループを離れ、ディーラー経営から退いている。こうした長期的・原点的発想を持つ人物が去る現状に、果たして自動車業界は大丈夫かと懸念せざるを得ない。
企業は人で成り立っている。危機の時代を乗り切るには、原点に立ち返り、人を真に大切にすることから始まるのである。