トヨタ「曲がり角」の現実──日本の新車販売286万台、ディーラーはなぜ「下請け化」したのか?

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日本の新車販売は1990年の598万台から2024年には286万台に半減。EVやコネクティッドカーの時代に、元ディーラー経営者・小栗成男氏が「メーカーとディーラーの原点回帰」を提言する。

原点回帰で活力再生

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 では、こうした事態にどう対処すればよいのか。やはり原点回帰が必要である。本書で小栗氏が示すように、トヨタの原点は

「人を大切にする会社」

である。メーカーの工員、ディーラーの販売員、整備士――すべてが企業グループを構成する重要な要素だ。トヨタは、古きよき日本企業の性格を色濃く持っていた会社である。

 小栗氏は、その原点が忘れ去られつつあることを指摘し、原点回帰の重要性を説く。例えば、40年前に訪問販売から店頭販売に移行する際、店頭販売即決術などのノウハウを、メーカーが全国ディーラーへの研修素材として扱えるように申し出たことがあった。また、メーカーの地区担当員とディーラーが一杯飲みに行くなどの交流も盛んだったという。こうした

・人間関係の構築
・本音で語り合う姿勢

が、日本企業の活力を支えてきたのである。ある意味、前時代的ともいえるこうした手法こそが、メーカーとディーラーの蜜月関係を築いたのである。

 もちろん、自動車業界だけの話ではない。IT化とコンプライアンスの厳格化により、何事も機械的・マニュアル的な管理が重視される。

「飲みニケーション」

のような交流は軽んじられ、上位者の意向を過度に忖度する風潮が生まれる。その結果、上の都合が現場に押し付けられ、回らない現場では不正がはびこることもある。上位者ほど、現場の実態を踏まえ、そこで働く人の考えを無視してはならない。

 しかし、現場の実態はそう簡単には見えてこない。深いコミュニケーションがあってこそ、相互理解は果たされるのである。

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