トヨタ「曲がり角」の現実──日本の新車販売286万台、ディーラーはなぜ「下請け化」したのか?

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日本の新車販売は1990年の598万台から2024年には286万台に半減。EVやコネクティッドカーの時代に、元ディーラー経営者・小栗成男氏が「メーカーとディーラーの原点回帰」を提言する。

ディーラー世襲の系譜

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 ディーラーの歴史は、トヨタ自動車が1950年代に販売網を構築する過程にさかのぼる。

 地元の大地主など有力者に声をかけ、自動車販売店を開業させたことが始まりだ。地元有力者は土地や建物を提供し、トヨタの看板を掲げて販売を行った。その後、他メーカーもこの方式に追随した。

 そのため、販売会社の経営は有力者の世襲で行われることが多い。小栗氏も例外ではない。小栗虎之助氏が創業し、小栗七生氏、そして小栗一朗氏が名古屋トヨペットを継承。一朗氏の弟である成男氏がネッツトヨタ名古屋を引き継いだ。

 小栗氏が本書で述べるように、ディーラーのオーナーはメーカーの指導を受けつつ、自らの責任で会社を経営してきた。自社のブランディングにも強くこだわった。本書第一章に登場する「レクサス」ブランドの成功がその典型例である。トヨタの高級車ブランド・レクサスを成功させるため、小栗氏は顧客へのお茶やおしぼりにまで徹底的にこだわり、ブランド化を図った。

 こうしたメーカーとディーラー双方の努力が、現在の日本自動車業界の隆盛を支えてきたことは間違いない。しかし、小栗氏によれば、メーカーとディーラーの蜜月関係は変化しつつあるという。

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