トヨタ「曲がり角」の現実──日本の新車販売286万台、ディーラーはなぜ「下請け化」したのか?
					日本の新車販売は1990年の598万台から2024年には286万台に半減。EVやコネクティッドカーの時代に、元ディーラー経営者・小栗成男氏が「メーカーとディーラーの原点回帰」を提言する。				
				
				販売低迷とメーカー優位

メーカーとディーラーの関係はゆがみつつある。その本質は、メーカーの発言力が強まり、ディーラーが対等なパートナーから
「下請け業者」
に変わりつつある点にある。
背景のひとつが新車販売台数の減少だ。日本の登録車の新車販売は1990(平成2)年の598万台をピークに減少し続け、2024年は286万台と半分以下になった。長く乗れる車の登場もあるが、日本経済全体の停滞が大きな原因である。
一方でメーカーは海外販売を含めて好調である。2024年のトヨタ自動車の営業利益は過去最高を記録した。国内販売でエリア制に縛られ、
・利益確保に苦戦するディーラー
・海外で過去最高益を出すメーカー
との対比は鮮明だ。
1950年代、地元経済の有力者がトヨタの販売店を担っていた時代、ディーラーオーナーは自動車販売以外の商売もできた。地域経済での地位も高かった。だが約70年を経て、オーナーは生まれながらのディーラー経営者となることが多くなった。販売低迷とあいまって、メーカーに物申すことが難しくなったのである。
さらにIT化も影響する。コネクティッドカー(インターネットや通信ネットワークに接続されたクルマ)の仕組みが進めば、メーカーとユーザーが直接つながり、整備や買い替えの案内も可能になる。そうなると、ディーラーは
「単なる販売整備事業者」
となり、ユーザーのカーライフに直接関与できなくなるだろう。