トヨタ「曲がり角」の現実──日本の新車販売286万台、ディーラーはなぜ「下請け化」したのか?

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日本の新車販売は1990年の598万台から2024年には286万台に半減。EVやコネクティッドカーの時代に、元ディーラー経営者・小栗成男氏が「メーカーとディーラーの原点回帰」を提言する。

ディーラー不正の背景

トヨタ自動車の豊田章男会長(画像:時事)
トヨタ自動車の豊田章男会長(画像:時事)

 自動車業界では、

・リコール隠し
・不正車検

などの不祥事が相次いでいる。そのなかにはディーラーが関与するものもある。小栗氏は、こうしたディーラーの不正には、

「現場を踏まえないメーカーの指導」

も一因であると指摘している。

 本書では、メーカーが「45分車検」を売り出した結果、ディーラーに過剰な車両が集まり、現場の作業が回らなくなった事例が紹介されている。そのため、一部作業を省略する不正が発生したのである。

 メーカーの好調とディーラーの下請け化は、現場を踏まえない方策がそのまま通る事態を招いた。グローバル市場を意識したメーカーの量産体制は、個々のディーラーやユーザーの事情を見えにくくしている。

 その結果として不正が生じる。本書では、代表取締役会長・豊田章男氏の下で、メーカーや章男氏の意向が優先され、

「現場の意見が上に届かない構造的問題」

として示されている。もちろん、これは章男氏個人の能力や資質の問題ではない。

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