2021年は前年比「4割増」 物流業界で近年「M&A」が急増しているワケ

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近年、物流業界で増加しているM&A。そのメリットとは何か。また、元来のネガティブイメージは今後払しょくできるのか。

M&Aを取り巻く大きな誤解

企業間取引のイメージ(画像:写真AC)
企業間取引のイメージ(画像:写真AC)

 M&Aという手法は、中堅・中小の物流企業に普及しているのものの、いまだに偏見が残っている。

・M&Aは困った会社、倒産しそうな会社が身売りでするものだ
・M&Aをした会社のドライバーやその役員は解雇され、一家離散、路頭に迷う
・従業員に裏切るようで顔向けできない

といった心配を吐露する社長もいるが、それは大きな誤解だ。これまでM&Aの実務現場に携わってきたが、このようなM&Aを経験したことは一度もない。

 ただ、M&Aのネガティブなイメージがおもしろおかしく取り上げられがちなのは、厳格な機密保持の元、クローズドな世界で実行されるため、部外者は知りえないという特性からだろう。

 直近の物流業界におけるM&Aの事例を見ると、好業績で地域を代表する中堅物流企業がM&Aで強者連合のように大手グループへ参画している事例がむしろ多い。エリアの力学関係が変われば、競合他社も戦々恐々としているという話も聞く。

 また物流業界は、ドライバーの活躍なしでは事業は立ちいかず、むしろ買い手企業からは「人材」に企業価値を見いだされ、「従業員を丁重に引き継ぎたい」ということも多い。社長と従業員は苦楽を共にしてきた関係であるため、特別な思いがある。

 しかし社長が60歳を超え高齢化していく中で、業界の変化や物流DX化などの新しい取り組みはすさまじいスピードで進展している。社長が第一線で体を張って雇用を守り続けられる時間は、健康リスクも顕在化しやすい年齢に差し掛かる中で、そう長くはないかもしれない。

 そんななか、大切に育ててきた企業と慕ってきたドライバーや従業員の雇用とその家族生活の安定のためにできることは何か。今後20~30年先の自社の在り方をますます問われる時代になっている。

 日本では、物流企業も例にもれず90%以上が中小企業であり、その成長と活力なくしては社会生活、企業活動、経済発展は語れない。友好的なM&Aという選択肢の浸透とその実態が正しく周知が進むことが、物流業界の発展と成長に寄与できるのではないだろうか。

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