2021年は前年比「4割増」 物流業界で近年「M&A」が急増しているワケ
買い手企業、売り手企業の狙い

近年、大手・中堅物流企業による未上場の中小零細規模の物流企業の買収が増加している。
直近3年間で公表された日本国内のM&A全体件数は
・2019年:4088件
・2020年:3730件(前年比91.2%)
・2021年:4280件(同115%)
となっており、新型コロナウイルス感染拡大などの影響により一度減少に転じたものの、直近では過去最高の件数を記録している。
物流業界のM&A件数は、
・2019年:80件
・2020年:89件(前年比111%)
・2021年:123件(同138%)
と一貫して増加しており、物流業界の再編の機運が見られる(出所:レコフM&Aデータベース)。
増加の背景にあるのは、「買い手と売り手の両社のニーズが合致している」ことが上げられる。買い手企業にとっては、
・物流機能の強化
・営業エリアの拡充
を念頭に、
・付加価値の高い物流分野への進出
・物流機能の強化
が目的にあるためだ。
また、既に物流業界全体の課題となっている
・ドライバー不足
・2024年問題
への対応は深刻である。2024年問題とは働き方改革に伴う、2024年4月からトラックドライバーの労働時間の上限規制強化(960時間まで)のことで、大手・中堅の物流企業といえども無縁ではいられない。その解決策の一手として、M&Aは注目されているのだ。
大手傘下に入るメリットとは

さて、売り手企業のM&A実施の事情にはどのようなものがあるのだろうか。
高度経済成長期に創業した中小企業の社長が高齢になり、2021年の国内企業の社長平均年齢は60.3歳(出所:帝国データバンク)となり、2025年には6割以上の社長が70歳を超える見通しだ。ふたりにひとりが70歳以上と言えば、深刻さがより感じられるだろう。
一方で、オーナー企業へのアンケートでは60歳以上が経営する企業において50%超が後継者がいないという結果もある。事業承継問題の山場が直前まで来ているのだ。大手・中堅物流企業にグループに入ることで、事業承継問題を解決し、同時に事業の経営力の根幹を強化する実現性も高まる。
中小零細の物流企業では下請け体質で、利益率に苦慮している企業も少なくない。M&Aにより大手にグループ入りすることにより、
・取引先の拡充/営業深耕
・輸送効率の向上
などで利益率を向上できる。
売り手企業にとって、ドライバーの高齢化は買い手企業より切実な問題だが、大手・中堅にグループ入りすることで、
・知名度
・ブランド
を活用し、採用力がアップしたという事例も聞く。
M&Aは2024年問題対応の選択肢として注目されており、大手・中堅の
・効率的な運営
・労務管理ノウハウ
などを活用し、対応していきたいという相談も増加している。
売り手・買い手双方にメリットがあり、
・事業承継問題の解決
・事業基盤の強化
の有力な選択肢としてM&Aが認知されはじめ、物流業界の経営環境は大きく変化している。そんななか、M&Aによる業界再編の流れは今後も加速していくと考えられる。