「鉄道軽視」「利益偏重」──JR東日本36事業本部制に批判コメントが殺到した根本理由
2026年7月、JR東日本は全国支社制を廃止し36事業本部へ再編する。非鉄道収益比率6割を目指す一方、現場軽視や安全不安の声も根強く、利用者・地域との信頼維持が改革成功のカギとなる。
地域鉄道の信頼再建

組織マネジメント論を学べばわかるが、組織再編自体はあくまで道具にすぎない。いい換えれば、
「ガス抜き」
の側面もある。鉄道事業に置き換えると、地域のニーズに応じて人材の流動性を高め、業務を再設計し、安全文化を育むことが不可欠である。長期的には
・収益成長
・安全運行
・地域接続性
の三要素を評価指標に組み込む必要もある。
36の事業本部制は地方活性化の可能性を示す一方、地域でのセクショナリズムや横の連携の難しさも露呈させるリスクが高い。少子高齢化や人口減少が進むなかでは、沿線人口ではなく
「移動回数」
ベースでの需要設計も不可欠である。地方事業本部でのモビリティ統合(バス・シェア・オンデマンド連携)を円滑に進めるには、組織自体をレジリエント(変化や危機に直面しても、機能や成果を維持しつつ迅速に立ち直れる力)にする工夫も必要だ。公共交通の改革は、制度の形ではなく、時間・安全・地域をどう未来につなぐかという設計思想にかかっており、計画の質がすべてを決める。
JR東日本の組織再編への批判の核心には、現場・利用者・安全の軽視への怒りがある。経営改革は必要だが、市場の声に偏りすぎれば交通事業の根幹を損なう危険もある。分割も統合も、制度の目的はただひとつ──人が安心して移動し、地域でつながる未来をつくることだ。
その原点を見誤れば、次に起きるのは信頼の消失である。信頼が失われれば、自発的な利用も地域協働も消える。これが地域に根差した鉄道作りの本質であり、事業者に忘れてほしくないポイントである。