東京から160km! 伊豆諸島「新島」はなぜ“ナンパ島”と呼ばれたのか
若者を魅了した新島伝説

かつて東京の若者が夏の思い出を作るために大勢押し寄せるスポットがふたつあった。山は山梨県の清里、海は東京都の新島だ。廃墟となった建物が残り、今も話題になる清里に比べ、新島は伊豆諸島の離島という立地もあってか、あまり顧みられていない。あのブームは一体何だったのか。改めて振り返ってみよう。
新島は伊豆諸島に属し、東京都新島村の行政区画にある島である。東京から南へ約160km、静岡県下田市からは南東に約36kmの距離に位置する。比較的本州に近いが、豊かな自然環境が保たれている。空気は清浄で、星空や海の美しさは首都圏とは比べ物にならない。気候は年間を通じて温暖であり、冬には「西ん風」と呼ばれる強い西風が吹くことが多い。
新島は約1万7000年前の噴火で形成された火山島だ。最高地点は宮塚山の標高432mである。最新の噴火は886年に起こり、島の南半分の向山を形成した。地震活動も活発で、1991(平成3)年や2000年には群発地震による被害が出たが、インフラは復旧している。島の地質は白く美しい流紋岩が多く、向山で採掘される抗火石は建築や装飾に珍重される。
周辺海域は黒潮の影響を受け、多様な海洋生物が集まる。セミクジラやマッコウクジラ、ザトウクジラ、ウミガメ、イルカなど希少動物が見られ、1989年には国内初のキタゾウアザラシも確認された。かつてはニホンアシカの繁殖地でもあった。
歴史は縄文時代までさかのぼる。江戸時代から明治初期にかけては政治犯の流刑地として使われた。島には独自の方言や伝統儀式、民話や妖怪伝説が根付いている。流人墓地や刑場跡など歴史の痕跡も多い。
交通は東海汽船の大型貨客船や高速ジェット船が東京や熱海と新島を結ぶ。隣接する島々との連絡には村営連絡船が活躍する。空路では新中央航空のドルニエ228型機が調布飛行場と結び、所要時間は約30分だ。
産業は漁業、農業、観光が中心である。漁業ではサバやイセエビ、トビウオなどが水揚げされ、名産のくさやも知られる。農業はアシタバや芋の栽培が盛んで、焼酎やワインなど加工品も生産されている。観光ではサーフィンが盛んで、世界的に有名な羽伏浦海岸ではプロの大会も開かれている。海水浴やキャンプ、無料温泉施設も人気だ。
観光スポットには白ママ断崖、流人墓地、日蓮宗三松山長榮寺、モヤイ像、新島村博物館、新島ガラスアートセンターなどがある。通信環境も整備され、2018年には光ファイバーが開通した。携帯電話はNTTドコモとソフトバンクの利用が中心で、一部山間部ではauが圏外となる。