見えない「海の侵略者」の正体――年間50億トンの「海水」が運ぶ生態系崩壊とは
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世界の海を巡る貨物船の「バラスト水」が年間30~50億tも移動し、数千万から数億の外来生物を運搬している。この見えない侵略者は生態系を脅かし、水産業や海運業、さらには人の健康にも影響を及ぼす。
バラスト水管理条約の対応策

バラスト水処理には複数の方法がある。現在実用化されている主な技術は、
・紫外線処理
・薬剤処理
・オゾン処理
・電気分解処理
などだ。基本的な流れは、まずバラストポンプで取り込んだ海水が処理装置に到達するまでの間にフィルターを通し、大きな微生物や浮遊物を除去する。その後、残った微生物を各処理方法で死滅させる。
紫外線処理は強力な紫外線を照射して微生物を殺す方法で、化学薬品を使わないため環境負荷が少なく、多くの船舶で採用されている。薬剤処理は次亜塩素酸ナトリウムなどの薬剤を投入して殺菌する手法だ。排水時には薬剤を中和するための中和剤も使う必要がある。電気分解処理は海水を電気分解して生成される次亜塩素酸などの酸化物質で微生物を処理する。船上で薬剤を生成できるため補給が不要だが、海水の塩分濃度に注意が必要である。
バラスト水処理装置は主に中国、韓国、続いて欧州や北米でシェアを拡大しており、紫外線処理や電気分解処理の採用が多い。
バラスト水管理条約は実質的にバラスト水処理装置の搭載を義務づけているが、対応基準は複数ある。従来のバラスト水交換法であるD-1基準は、タンク容量の3倍量の水を交換するか
「95%以上」
の交換を証明することを求める。一方、D-2基準は排出される水中の生物量を一定以下に抑えることを義務づける。条約はD-1規制からD-2規制への移行を促している。
バラスト水処理装置は搭載期限を迎え、船舶設計に欠かせない装備となったが、設計や運航面で課題も残る。まず機器のコンパクト化が求められている。船内の限られたスペースを有効活用するためだ。次に低コスト化だ。処理方式によっては薬剤費用、電力使用量、メンテナンス費用がかかり、いかにランニングコストを抑えるかが重要となっている。