三菱自動車、なぜ中国から完全撤退するのか?「EV比率5割」の中国市場が日本メーカーに突きつけた“エンジン終焉”の現実

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中国市場からの完全撤退を決めた三菱自動車。四半期純利益は前年同期比97%減の7億円に沈み、北米も赤字転落した。だが、これは敗北ではない。EV化で主導権を握る中国に背を向け、成長市場・ASEANに経営資源を再配置する選択だ。脱エンジン、脱過去の構造転換が、次の成長を描けるかの試金石となる。

脱アライアンス依存の試練

三菱自動車・アウトランダーPHEVシステム(画像:三菱自動車)
三菱自動車・アウトランダーPHEVシステム(画像:三菱自動車)

 三菱自動車は、日産・ルノーとのアライアンスのなかでサブブランド的な立場にあり、独自色を打ち出しづらい構造に置かれている。存在感を示すには、連携強化や収益確保を優先せざるを得ず、結果的に自社開発力や先端技術投資の限界が露呈する場面も少なくない。

 特にEVやソフトウェア開発においては、日産やルノーへの依存から抜け出すことが難しい状況にある。そうした制約の中で、三菱自が得意とする小型SUV、ピックアップ、PHV領域に戦略を集中させる姿勢には一定の合理性がある。

 しかしながら、それだけで成長軌道に乗れるとは言い難い。PHVの性能強化や柔軟なプラットフォーム開発、現地人材の開発力向上といった取り組みが、縮小均衡を打破する鍵となる。

 今回の中国市場からの完全撤退は、敗退ではなく、資源を再配分する機会とも捉えられる。今後の成長には、以下の三つの視点が重要となる。

 第一に、市場の精緻な選別だ。一時的な販売台数を追うのではなく、製品寿命や政策動向を踏まえた中長期ポートフォリオの構築が求められる。

 第二に、技術開発の優先順位を見直す必要がある。電動化が進むアジア市場を前提に、PHV技術の中核化や車両アーキテクチャの再設計を急ぐべきだ。

 第三に、他社との連携モデルの再構築も不可欠である。アライアンスの枠内で「協働」と「自立」のバランスを再定義することが、持続的成長への条件となる。

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