三菱自動車、なぜ中国から完全撤退するのか?「EV比率5割」の中国市場が日本メーカーに突きつけた“エンジン終焉”の現実

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中国市場からの完全撤退を決めた三菱自動車。四半期純利益は前年同期比97%減の7億円に沈み、北米も赤字転落した。だが、これは敗北ではない。EV化で主導権を握る中国に背を向け、成長市場・ASEANに経営資源を再配置する選択だ。脱エンジン、脱過去の構造転換が、次の成長を描けるかの試金石となる。

中国勢台頭と日系包囲網

三菱自動車・トライトン(画像:三菱自動車)
三菱自動車・トライトン(画像:三菱自動車)

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要5か国(タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム)は、世界でも有数の高成長地域である。若年層の割合が高く、都市化が急速に進む中で中間層も拡大しており、自動車需要の大幅な伸長が期待されている。

 このASEAN市場は長らく日系メーカーの牙城だった。8割近いシェアを誇り、三菱自動車にとっても極めて重要な市場だ。同社のグローバル販売台数に占めるASEANの構成比は約3割に達する。

 三菱自が2023年3月に発表した中期経営計画「Challenge 2025」では、ASEANおよびオセアニア地域を成長ドライバーと位置づけ、経営資源を集中させる方針を打ち出した。新車投入を加速させ、販売台数と収益の拡大を目指す。

 現時点ではASEANにおいて依然としてエンジン車の支持が根強い。三菱自はピックアップトラック「トライトン」やMPV「エクスパンダー」などで高いブランド力を維持している。

 しかしその優位も揺らぎ始めている。中国メーカーのASEAN進出が加速しており、BYDはEVの現地展開を本格化。2024年7月にはタイでASEAN初のEV工場を稼働させた。2025年11月にはカンボジア、2026年1月にはインドネシアでも生産を開始予定で、ベトナムにも工場建設を計画している。

 中国勢は各国政府や地場資本と連携を強めながら、ASEANをEVの新たな主戦場と見なしている。数年内に「第二の中国市場」と化す可能性もある。

 三菱自をはじめとする日系メーカーがASEANを今後も成長基盤として維持できるかは、「地域を重視する」だけでは不十分だ。新たな競争条件下で、どう勝ち筋を描けるかが試されている。

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