トランプ大統領がオラついても無駄? 「アメ車」が日本で売れない根本理由、データを読み解く
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アメ車の日本市場シェアはわずかだ。メルセデス1社にすら及ばない現実の裏には、性能だけでは語れない構造的な壁がある。消費者心理、金融制度、維持コスト、文化的ギャップ――。選ばれないのではなく、そもそも選択肢に入っていない。売れないのではなく、届いていない。その再生には、徹底した「市場適応力」が問われる。
日本市場に立ちはだかる壁

米国で作られた自動車、いわゆる“アメ車”は、日本でなかなか売れていない。これは業界のあいだではすでに知られている現実である。日本では、輸入車のなかでもドイツ車がとくに人気があり、欧州の車が選ばれやすい。日本と道路の広さや使い方が近いことが、その理由のひとつとなっている。
日本自動車輸入組合の調べによると、2023年度に登録された輸入の乗用車は24万台をこえた。そのうちアメ車でもっとも売れたのはジープだったが、1万台ほどにとどまった。シェアはわずか4%台である。翌2024年度は輸入車全体の登録台数が33万台を超えたが、ジープの台数は減り、12番目にまで順位を下げた。一方、メルセデス・ベンツは5万台以上を売り、アメ車全体よりも多かった。
この大きな差は、単に宣伝のしかたやブランドの強さだけでは説明できない。トランプ大統領が日本に対していくら温度が高くなったところで、本質的な問題は別のところにある。日本の市場には、アメ車にとって不利なしくみや条件がある。それが販売の妨げになっている。
では、なぜアメ車は日本であまり選ばれないのか。理由は車の大きさや燃費の悪さといった性能面にかぎらない。日本の消費者は、アメ車に対して距離を感じている。ローンを組むための条件やお金の面でも、アメ車を買うには高いハードルがある。さらに、「アメ車は自分には合わない」という思い込みも広く根づいている。
もっとも大きな問題は、そもそもアメ車が買う選択肢に入っていないことである。つまり、人びとの意識のなかにアメ車という存在がほとんどない。その無関心こそが、アメ車が日本で売れない最大の理由である。