羽田再開発“540億円”の大誤算? 「空港隣接」でも人が全然いない根本理由

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羽田空港の再開発が迷走している。新施設は閑散とし、設備の統一感もなく、複数の運営主体が乱立。国際拠点としての期待とは裏腹に、現場では連携不全と機能分断が顕在化している。

バラバラ運営の弊害

チャンギ空港のウェブサイト(画像:チャンギ)
チャンギ空港のウェブサイト(画像:チャンギ)

 ウェブサイトにも空港施設にも案内がほとんどない。この連動性のなさの背景には、羽田空港周辺施設の運営主体のバラバラさがある。運営会社を見てみると、以下のように完全に分かれている。

・羽田イノベーションシティ:羽田みらい(鹿島建設、大和ハウス工業、京浜急行電鉄、日本空港ビルデング、空港施設、JR東日本、東京モノレール、野村不動産パートナーズ、富士フイルムなどの共同出資)
・羽田エアポートガーデン:住友不動産商業マネジメント
・第1・第2ターミナル:日本空港ビルデング
・第3ターミナル:東京国際空港ターミナル(日本空港ビルデングが過半数の株を保有)

第3ターミナルに関しては、日本空港ビルデングとの資本関係により、ある程度の連携は見られる。だが、再開発施設である羽田イノベーションシティや羽田エアポートガーデンとターミナル施設との間には、連動と呼べるようなつながりはほとんどない。

 特に羽田イノベーションシティは、ホテルは京急とJR東日本、駐車場は空港施設など、施設ごとに異なる事業者が運営している。運営が分断されており、統一感がない印象を受ける。

 さらに、空港そのものの所有者は日本政府。つまり、所有と運営の双方が完全にバラバラという構造だ。広大な敷地をゾーン分けして、互いに連動しないままバラバラに開発してしまった結果、以下のような問題が起きている:

・動線が複雑
・テナントが重複
・相互の案内表示がない

この構造は、かつて東京で失敗した都市開発として知られる汐留シオサイトを彷彿とさせる。それだけに、羽田再開発の課題は軽視できない深刻な問題だといえる。

 一方、シンガポール・チャンギ空港の「Jewel」は、空港直営のモールである。空港と施設を同一事業者が運営しているからこそ、あれほどまでに高い連動性が実現できているのだろう。

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