なぜSUVは25年で「前方視界」が激減したのか? 米国調査が示す「死角リスク」の拡大
最新SUVの視界は28%に低下。安全装備は進化する一方、ドライバーの死角は拡大し、歩行者・自転車の死亡事故は米国で37~42%増加。年々大型化する車体設計が視認性を悪化させ、交通安全の根幹を揺るがしている実態を米国研究が明らかにした。
新型SUVの死角問題

一般的に「新しいクルマほど安全性が高い」と考えられている。確かに、乗員保護性能や衝突回避機能などは年々進化している。しかし皮肉なことに、周囲に対する危険性はむしろ新型車の方が高まっているという調査結果がある。とりわけ近年のスポーツタイプ多目的車(SUV)は、ドライバーの視界が著しく狭くなっているのだ。
車両の安全性を評価する際、運転席からの視認性は基本中の基本である。視界のよし悪しは、歩行者や障害物の早期発見に直結し、事故回避のカギを握る。
ところが視認性の広さは、これまで正確に数値化するのが難しかった。
・路上テスト
・比較検証
では主観的評価に頼らざるを得ず、客観的な評価基準が欠けていた。
この課題に取り組んだのが、米国道路安全保険協会(IIHS)である。保険業界が設立した非営利団体で、事故予防や損傷軽減を目的に調査研究を行っている。
IIHSは360度回転するカメラを運転席に複数設置し、体格の異なるドライバーの目線からの視界を撮影。撮影された画像はソフトウェアで解析され、車両を中心とした一定の半径内で、道路のどの範囲が見えるかが数値化された。同時に、
・Aピラー(前方支柱)
・ボンネット
・サイドミラー
など、視界を遮る構造要素も特定された。これにより、
・どこに死角があるのか
・周囲の何%が見えているか
を、上空画像として可視化する手法が確立された。