「突走る愛にブレーキはない」──近藤真彦『ハイティーン・ブギ』が映す、現代社会が忘れた“身体の記憶”

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1982年に発売された近藤真彦の『ハイティーン・ブギ』は、移動の自由と青春の情熱を象徴する名曲だ。当時、ホンダやヤマハが牽引した若者向けバイク市場は社会的触媒となり、都市間移動の拡大と共に若者の感情を加速させた。しかし現代、原付免許取得者は20年で半減し、バイク文化は衰退。リモート化やSNS時代に失われた「速度と自由」を再考する視点を提示する。

2025年も求める風を切る夜

ライダーのイメージ(画像:写真AC)
ライダーのイメージ(画像:写真AC)

『ハイティーン・ブギ』は、昭和の残り香を纏ったアイドルソングでありながら、移動の自由が感情の自由と結びついていた時代の、貴重な記録であり、予言でもある。バイクが移動手段でなく、人間の意志と物語を繋いでいた時代。その速度と不安定さを抱きしめていた世代の、最後のラブソングなのだ。

 いま私たちがそれを聴き返すとき、そこにあるのは過去ではなく、「かつて可能だった未来」である。あの歌は終わっていない。なぜなら、いまの社会がその速度を失ったままだからこそ、あのブギは走り続けている。

 ブレーキのない愛と、地図に載らない風景を求めて――。2025年の私たちもまた、どこかで風を切る“あの夜”を待っている。

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