救急車サイレンに「苦情」 もはや命さえ騒音なのか? 91万件超の出動が示す“共存”と“静寂”のジレンマ
救急出動は年間91万件超、しかし通報の約7割が軽症または不要案件――高齢化や社会不安の影響でサイレン苦情が急増している。認知性と静音性の両立が求められるなか、各地で可変式サイレンの導入や音環境改善が進む。「サイレン共存社会」構築の最前線を追う。
税金投入で進む可変音救急車導入

緊急自動車に関する細目告示は国土交通省が所管し、「道路交通法」は警察庁が担当している。サイレンの音量に関する詳細なルールは、細目告示に明記されている。
細目告示は、車両全般に共通する安全・環境基準を定めるとともに、輸送の安全確保を目的に設けられた。規格化された音量と音色によって、「ピーポーサイレン」は子どもから大人まで広く認知されるようになった。これにより、誰もが救急車の接近に気づきやすい仕組みが整っている。
一方、パナソニックではオフィスのレイアウトや音・光環境のゾーニングにより、職場の快適性向上と騒音緩和に取り組んでいる。こうした環境改善や可変式サイレンの技術を組み合わせれば、サイレン音を「騒音」ではなく、駅の改札音や通知音のような社会インフラの一部として捉える意識が醸成される可能性がある。
山口県下関市では、住民からの寄付を原資として、可変式サイレンを搭載した救急車を導入。配備式も行われ、地域住民に対してサイレンへの理解を深める啓発活動を積極的に展開している。
救急車の運用は税金で支えられている。国民全体で「サイレン共存社会」の構築に取り組む必要がある。