熊本バス改革“最大の犠牲者”は「10代」か? 9.7%にとどまるクレカ決済、ICカード廃止が生む移動格差の実態とは
全国交通系ICカードの取り扱いを中止した熊本県の交通5社。代替として導入されたタッチ決済型クレカの利用率はわずか9.7%にとどまる。影響を大きく受けたのは、高齢者ではなく10代の学生だった。制度設計の盲点が、移動の自由を奪っている。
熊本県交通改革の影響集中層の実態

以上のことから、熊本県の交通5社がキャッシュレス乗車の仕組みを大きく変えたことで、特に影響を受けているのは10代や学生である可能性が高い。彼らはクレジットカードや一部のデビットカードなど、「大人や働いている人向け」の支払い方法を使えないか、使えてもあまり使えない立場にある。そのため、使える支払い方法が変わることが、実質的に彼らの移動を制限してしまっている。
このような状況で、6月16日に肥後銀行が新しいアプリ『くまモン!Pay』を出した。このアプリはVisaのタッチ決済に対応していて、公共交通でも使える。地域の銀行と連携しているため便利だが、以前の全国交通系ICカードの代わりにはなっていない。使うには銀行口座を持ち、スマホの操作が必要だ。さらにプリペイド方式のため、残高の管理やチャージも必要になる。これらは、今までのICカードにはなかった操作や金融の知識を求められるため、特にまだ社会経験が少ない人にとっては使いにくい壁となっている。
公共交通での支払い方法は、移動できるかどうかに直接かかわる問題である。しかし全国交通系ICカードが使えなくなったことで、学生や未成年、収入が安定しない人たちが使える支払い方法を奪われたままになっている。交通手段があっても支払い方法がなければ、利用できなくなってしまう。これは、制度のせいで移動が妨げられる典型的な例である。
支払い方法の変更は、見た目にはサービスの効率化やキャッシュレス化の促進に見える。しかし、制度を変えるときに「誰が使えなくなるか」をきちんと考えなければ、その影響は特定の人たちに集中してしまう。熊本県の場合、その影響は若い世代、とくに10代の移動に対する制限として現れている可能性が高い。