日産「追浜工場」は生き残れるか? 鴻海EV協業で問われる「完成車メーカー」の定義

キーワード :
, , ,
日産が鴻海とEV協業を模索する追浜工場の存続問題は、国内自動車産業の構造転換を象徴する。約2万人の人員削減と工場再編を掲げる中、外資との異例連携が生産モデルと権限配分の再定義を迫る。EVの市場拡大にともない、設計思想と品質基準の継承が経営の重大課題となっている。

日産と鴻海の生産再定義

日産自動車のロゴマーク。2022年1月14日撮影(画像:時事)
日産自動車のロゴマーク。2022年1月14日撮影(画像:時事)

 経営再建を急ぐ日産自動車が、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と電気自動車(EV)分野での協業に向けた検討を進めている。焦点は、神奈川県横須賀市の追浜工場の去就だ。国内事業の合理化が進むなか、追浜工場の閉鎖も取り沙汰されている。

 仮に両社の協業が実現し、追浜工場が生産拠点として維持されれば、雇用の確保や地域経済への波及効果も期待できる。ただし、鴻海による単なる製造委託にとどまらず、より踏み込んだ関与に発展する可能性もある。

 そこに浮かび上がるのは、完成車メーカーの定義が変容しつつある現実と、EVシフトが次の段階へ進もうとしているという構造変化だ。

 日産は2025年5月13日、経営再建計画「Re:Nissan」を発表した。グローバルで約2万人の人員削減と、工場数を現行の17から10へ再編する方針を掲げ、追浜工場も再編の対象と報じられた。

 その直後に浮上したのが、鴻海が手がけるEVを追浜工場で受託生産するというプランである。実現すれば、日産の新規投資を抑えつつ、工場稼働と雇用維持の道筋が見えてくる。一方で、日産が他社製EVをOEM生産するのは前例のない試みとなる。

 さらに視野を広げれば、この協業の延長線上に、鴻海による日産への資本参加という展開も浮上する可能性がある。

全てのコメントを見る