なぜ日本の鉄道オタクは“孤独な消費者”になったのか──「鉄道趣味」の社会的接続をめぐる国際比較【連載】純粋鉄オタ性批判(4)
撮り鉄を中心に鉄道オタクのトラブルが増加し、社会的評価が低下している。ネット普及から30年、拡大した「注目欲求」が過激行動を助長。一方、欧米では鉄道趣味が地域連携や保存活動を通じ共創文化として成熟。日本でも参画型の趣味活動や公共空間の再整備が急務であり、鉄道文化の持続的発展にはオタクの社会的役割の再定義と教育改革が求められている。
日本の鉄道オタクを問い直すとき

鉄道は、単なる移動手段ではない。そこには、技術、歴史、文化、そして人々の記憶が凝縮されている。しかし、近年、一部の鉄道オタクによる過激な行為や偏った言動が、この豊かな世界を歪めてはいないだろうか。本連載「純粋鉄オタ性批判」では、本来の鉄道趣味の姿を問い直し、知的好奇心と探究心に根ざした健全な楽しみ方を提唱する。万国の穏健派オタクよ、団結せよ!
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撮り鉄によるトラブルが相次いでいる。テレビや新聞で報道される機会が増えるたびに、撮り鉄、さらには鉄道オタク全体の社会的イメージは悪化している。
背景には、インターネットの普及がある。市民が自由にネットを使えるようになってから、すでに30年が経過した。誰もが気軽に画像を投稿し、自身のウェブサイトやSNSで共有できる時代になった。
だが、それとともに「注目されたい」「目立ちたい」という欲求も膨らんだ。結果として、トラブルを起こしてでも過激な行動に出る鉄道オタクが増えてきた。ゆがんだ承認欲求が表面化し、撮り鉄だけでなく鉄道オタク全体へのバッシングを招いている。
鉄道オタクは、一般に社交性が高くない。多くはひとりで趣味に没頭する傾向が強い。いわば
「一匹狼型」
が主流だ。かつては静かに楽しむ存在だったが、ネットの隆盛とともに一部の行動が過激化している。社会との接点が薄れ、孤立を深めている点は見過ごせない。
ここで浮かぶ問いがある。こうした傾向は日本に特有なのか。それとも、海外の鉄道オタクにも同様の傾向が見られるのか。本稿では、オタクの国際的な動向にも目を向けていく。