なぜ日立は「車両メーカー」から脱皮するのか? 信号・制御で世界トップシェアの裏に、年平均成長率9.3%「7兆円市場」への大転換
日立製作所が自動運転システムで存在感を高めている。完全無人運転(GoA4)を導入する欧州の都市鉄道に対応し、制御や保守を含めたシステム全体の統合を推進。2024年のギリシャ案件は、同社が車両メーカーから都市インフラの中枢へと進化した象徴といえる。
ギリシャ受注に見る欧州参入の突破口

2024年、日立はギリシャ・アテネの地下鉄に、GoA4対応の自動運転システムを納入した。車両、信号、制御、保守を一体で提供するパッケージ契約となる。
この案件は、厳格な審査基準で知られる欧州市場においてもきわめて稀な事例だ。とりわけ、完全自動運転GoA4の採用実績として、日立にとって象徴的な意味を持つ。非EU企業には制度的な参入障壁が存在するなか、それを突破した点は契約規模以上に評価される。
「都市鉄道 × GoA4 × トータルソリューション」
という、欧州で最も価値の高い三要素をすべて備えた本案件は、日立が鉄道のOSを担う存在であることを明確に示した。今後も、都市交通の中枢を握る事業モデルとしての展開が期待されている。
都市鉄道では、混雑や駅数の制約を抱えるなかで、自動運転化の加速が不可避とされる。Straits Researchの予測によれば、自動運転列車の世界市場は2023年の85.7億ドルから、2032年には142億ドル(約2兆700億円)に拡大する(年平均成長率5.8%)。さらに、鉄道信号システム市場全体では、2023年の220億ドルから、2032年には約491億ドル(約7兆1700億円)へと倍以上に拡大する見通しだ(年平均成長率9.3%)。
競合も激しさを増す。仏アルストムや独シーメンスは、長年培った制御技術に加え、AIとの連携による自律運行を推進している。こうしたなか、日立が市場に割って入るには、価格競争力、信頼性、保守体制で優位に立つことが不可欠となる。