都心「巨大再開発」もういらない? 新宿駅南口プロジェクト「工期未定」の大波紋――建設費1.4倍が示す“都市開発モデル”の限界

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新宿駅南口の再開発が資材価格高騰と人手不足で暗礁に乗り上げた。建築費指数は10年で約1.4倍に上昇し、ゼネコンの手持ち工事は平均18カ月超。こうした環境変化が鉄道会社の投資戦略を見直させ、全国で大型再開発の延期や計画修正が相次いでいる。長期・巨額プロジェクトのリスクが顕在化し、従来の都市開発モデルは転換期を迎えている。

施工会社が集まらない理由

新宿。画像はイメージ(画像:写真AC)
新宿。画像はイメージ(画像:写真AC)

 建設資材の価格上昇が深刻化している。建設物価調査会の建築費指数(2015年 = 100)は、2025年5月時点で集合住宅(SRC造)が137.2、事務所(S造)が137.0と、10年間で約1.4倍に達した。つまり、同じ建物を建てるのにかかるコストは3~4割増しになった計算だ。この結果、長期プロジェクトでは当初予算との乖離リスクが高まり、ゼネコンは収益性の見通しを立てにくくなっている。

 人手不足も深刻さを増している。国土交通省によると、建設業者数は2021年時点で約48万業者と、1999(平成11)年のピークから約21%減少。就業者数も2022年に約479万人まで減り、1997年比で約30%の落ち込みとなった。

 賃金の上昇率は2023年で3.6%と全産業平均(2.9%)を上回るものの、

・賃金水準の低さ
・長時間労働

が障壁となり、人材確保は依然として困難な状況が続く。年齢構成も偏りが顕著で、55歳以上が36.6%、29歳以下はわずか11.6%と高齢化が進行。技術承継も大きな課題となっている。

 こうした状況を受け、ゼネコンは事業戦略の見直しを迫られている。長期型の大型再開発は、資材や労務費の変動リスクが大きく、収益見通しを立てづらいためだ。

 建設専門ポータル「アーキブック」が公表した2024年度版「ゼネコンの手持ち工事月数ランキング」によれば、手持ち工事は平均18.3か月に達する。大成建設が23.9か月、清水建設が18.4か月、大林組が18.2か月といずれも長期化傾向にあり、新規案件への対応余力は限られている。結果として、リスクの高い大型案件からの撤退や受注の選別が進んでいる。一方、建設投資は拡大基調を維持しており、需給のミスマッチが深まっている。大規模な都市開発プロジェクトが

「計画はあるが施工会社が決まらない」

という事態に陥るケースが各地で目立っている。

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