都心「巨大再開発」もういらない? 新宿駅南口プロジェクト「工期未定」の大波紋――建設費1.4倍が示す“都市開発モデル”の限界
施工会社が集まらない理由

建設資材の価格上昇が深刻化している。建設物価調査会の建築費指数(2015年 = 100)は、2025年5月時点で集合住宅(SRC造)が137.2、事務所(S造)が137.0と、10年間で約1.4倍に達した。つまり、同じ建物を建てるのにかかるコストは3~4割増しになった計算だ。この結果、長期プロジェクトでは当初予算との乖離リスクが高まり、ゼネコンは収益性の見通しを立てにくくなっている。
人手不足も深刻さを増している。国土交通省によると、建設業者数は2021年時点で約48万業者と、1999(平成11)年のピークから約21%減少。就業者数も2022年に約479万人まで減り、1997年比で約30%の落ち込みとなった。
賃金の上昇率は2023年で3.6%と全産業平均(2.9%)を上回るものの、
・賃金水準の低さ
・長時間労働
が障壁となり、人材確保は依然として困難な状況が続く。年齢構成も偏りが顕著で、55歳以上が36.6%、29歳以下はわずか11.6%と高齢化が進行。技術承継も大きな課題となっている。
こうした状況を受け、ゼネコンは事業戦略の見直しを迫られている。長期型の大型再開発は、資材や労務費の変動リスクが大きく、収益見通しを立てづらいためだ。
建設専門ポータル「アーキブック」が公表した2024年度版「ゼネコンの手持ち工事月数ランキング」によれば、手持ち工事は平均18.3か月に達する。大成建設が23.9か月、清水建設が18.4か月、大林組が18.2か月といずれも長期化傾向にあり、新規案件への対応余力は限られている。結果として、リスクの高い大型案件からの撤退や受注の選別が進んでいる。一方、建設投資は拡大基調を維持しており、需給のミスマッチが深まっている。大規模な都市開発プロジェクトが
「計画はあるが施工会社が決まらない」
という事態に陥るケースが各地で目立っている。