都心「巨大再開発」もういらない? 新宿駅南口プロジェクト「工期未定」の大波紋――建設費1.4倍が示す“都市開発モデル”の限界

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新宿駅南口の再開発が資材価格高騰と人手不足で暗礁に乗り上げた。建築費指数は10年で約1.4倍に上昇し、ゼネコンの手持ち工事は平均18カ月超。こうした環境変化が鉄道会社の投資戦略を見直させ、全国で大型再開発の延期や計画修正が相次いでいる。長期・巨額プロジェクトのリスクが顕在化し、従来の都市開発モデルは転換期を迎えている。

空白が生む経済・都市的インパクト

新宿。画像はイメージ(画像:写真AC)
新宿。画像はイメージ(画像:写真AC)

 新宿の事例は、全国で広がる現象の一端にすぎない。建設コストの高騰と人手不足を背景に、各地で再開発計画の見直しが相次いでいる。

 東京都中野区では、中野サンプラザ跡地の再開発で総事業費が当初の1810億円から3500億円に膨張。代表事業者の野村不動産が見直し案を提示したが合意に至らず、2025年3月に事業者選定をやり直す事態となった。2024年には、東京・五反田のTOCビルがテナント退去後の建て替えを延期するという異例の判断を下した。このほかにも、再開発や大規模建て替えの延期・見直しは枚挙にいとまがない。

 こうした環境下で、発注者と受注者の力関係に変化が生じている。かつては発注者が優位に立っていたが、いまやゼネコン側が「主導権」を握りつつある。

・工期が短く、単価の高いデータセンター
・価格転嫁しやすい工場

を優先的に受注する選別姿勢が定着した。数年に及ぶ大型再開発は、資材価格の変動リスクが大きく、収益予測も困難。加えて、長期間にわたる人的リソースの拘束も重荷となる。こうした背景から、ゼネコンが大規模案件を敬遠する傾向が強まっている。

 都内でも注目を集めた新宿駅の再開発すら停滞したことで、2000年代以降に隆盛を極めた都市開発モデルは、すでに転機を迎えていると考える。

 駅前の一等地を取得し、超高層ビルで商業・オフィス・住宅を複合展開する手法は、都市再生政策と経済回復を追い風に成立してきた。しかし、建設費の高騰と人材不足により、この巨大プロジェクト型の開発は採算が見込めなくなった。

 施工体制のひっ迫により、ゼネコンは選別受注を強化。発注者よりも施工側が優位に立つ構造へと変わりつつある。テレワークの普及でオフィス需要が不透明な今、数千億円規模の再開発は過大なリスクをともなう投資になった。

 このため、都市開発のあり方そのものが変わらざるを得ない。今後は、大規模な一括開発に代わって、

「段階的な小規模開発」

が主流になる。用途を柔軟に変更できる建物設計など、市況変化に対応できる機動性が重視される時代が来る。

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