「現存最古の路面電車」はなぜ残されたのか──債務37億円の「とさでん交通」 12億円支援の実情と10年後のあるべき姿とは

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高知県を走るとさでん交通の路面電車は、当面存続することになった。県や高知市など沿線の地方自治体が支援の拡大を決めたためだ。しかし、将来の危機が完全に回避されたわけではない。

持続可能な運行へ正念場はこれから

とさでん交通への支援を拡大する高知県庁(画像:高田泰)
とさでん交通への支援を拡大する高知県庁(画像:高田泰)

 だが、とさでん交通を取り巻く環境は厳しい。国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年国勢調査の県人口約69万人は2050年で約45万人に減る見込み。路面電車が走る高知市は約33万人が約24万人、南国市は約4万7000人が約3万3000人、いの町は約2万1000人が約1万1000人になると推計されている。

 路面電車の乗客は運転免許を持たない子どもと高齢者が多いが、県によると、2024年度に約5万2000人いた県内小中高校の児童生徒数は、少子高齢化で2027年度に約4万8000人に落ち込み、その後も減少を続ける見通しだ。65歳以上の高齢者人口も2020年の約24万5000人がピークで、2045年には約21万3000人に減ると予測されている。

 県内は大人ひとりにマイカー1台の車社会。路線維持にはこれまで路面電車を利用しなかった乗客を確保しなければならないが、マイカーの利便性に慣れた住民を路面電車に呼び戻すのは容易でない。

 しかも、県や沿線自治体の財政は社会保障費の増大と税収の減少で厳しさを増す一方。今回のような大幅な支援拡大を何度も続ける余裕はなくなりつつある。高知市交通戦略課は

「支援の方向は決まったが、10年後のあるべき姿をまとめるこれからが正念場」

と気を引き締める。

 とさでん交通の路面電車は日本で2番目に古い1904(明治37)年の開業。ちょうど日露戦争が勃発した年で、現存する路面電車で最古となる。高知市を訪れる観光客の多くが利用し、高知市のシンボルにもなっている大切な存在だ。県と沿線自治体はこの厳しい環境を乗り越え、持続可能な未来を切り開くことができるのだろうか。

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