なぜJR武蔵野線と西武池袋線は「直通運転」に踏み切るのか? 乗換え500m・急行通過駅の課題をどう克服? 郊外間新移動圏を考える
JR東日本と西武鉄道が2028年度を目標に武蔵野線と西武池袋線の直通運転を検討中だ。既存の不便な乗り換えを解消し、郊外間の新たな移動需要創出を目指すこの計画は、首都圏鉄道網の利便性向上と地域経済活性化に向けた戦略的布石といえる。
武蔵野線ダイヤ編成の難題
すでに線路は接続されているものの、今回の直通計画は相当なコストをともなう。JR東日本と西武鉄道では、
・車体長
・ドア数
・床面高さ
などの車両規格が異なる。加えて、列車運行の安全を確保する保安システム、すなわち信号方式も根本的に違う。
連絡線や駅の改良工事も不可欠だ。軌道の強化、信号設備の更新、電力供給体制の増強に加え、
・新たなホームの増設や既存ホームの改修
・引き上げ線の設置
も求められる。
さらに課題となるのが、武蔵野線へのダイヤ編成だ。昼夜を問わず貨物列車が多数走る路線に、どう旅客列車を組み込むかは容易ではない。
それでも今回の直通構想が報道段階にまで進んでいるのは、これらの技術的・運用的な課題に一定の見通しが立ったからだと見られる。両社はコストを負担してでも直通に踏み切るだけの意義があると判断したのだろう。
それだけ、この直通計画には収益や戦略的効果が期待されている。