なぜJR武蔵野線と西武池袋線は「直通運転」に踏み切るのか? 乗換え500m・急行通過駅の課題をどう克服? 郊外間新移動圏を考える
JR東日本と西武鉄道が2028年度を目標に武蔵野線と西武池袋線の直通運転を検討中だ。既存の不便な乗り換えを解消し、郊外間の新たな移動需要創出を目指すこの計画は、首都圏鉄道網の利便性向上と地域経済活性化に向けた戦略的布石といえる。
都心迂回型路線の再評価
JR武蔵野線は、東京都心を通らず、首都圏の外縁部を半円状に結ぶ路線である。
・南武線(府中本町)
・中央本線(西国分寺)
・東武東上線(北朝霞 = 朝霞台)
・埼京線(武蔵浦和)
・京浜東北線(南浦和)
・東武スカイツリーライン(南越谷 = 新越谷)
・つくばエクスプレス(南流山)
・常磐線(新松戸)
・京葉線(西船橋)
など、多くの路線と接続している。接続網は広いものの、武蔵野線は本来のポテンシャルを発揮しきれていない。平日の朝夕は通勤・通学客で混雑するが、昼間や休日の利用は限定的だ。直通運転もJR線内の大宮方面や京葉線方面にとどまり、私鉄との連携は乏しい。
この状況に対し、都心直結の西武池袋線と武蔵野線が接続すれば、意義は大きい。従来、鉄道でのアクセスが不便だった
「郊外対郊外」
の移動ルートが新たに形成される。武蔵野線のネットワーク価値は飛躍的に向上する可能性がある。
もともと貨物輸送や回送といった裏方機能を担ってきた武蔵野線が、今回の計画をきっかけに、旅客路線としての存在感を強めることになりそうだ。