SDGs時代で大注目も 「燃料電池バス」に忍び寄る、利用者たちの見えざる不満
災害時には非常用電源に大変身

都営バスでの導入を契機として、燃料電池バスは全国でも普及しつつある。一方で、従来のバスにはなかった利用方法も考えられている。
それは、災害時に燃料電池バス自体を非常用電源にするものだ。2021年9月に東京都が示した計画では、外部給電器を都内の水素ステーションに配備し、災害時には避難所で携帯電話や照明などへ給電できるとしている。都営バスが使っている燃料電池バスの給電能力は毎時235kwで、これは避難所の消費電力の
「約4~5日分」
に相当する(『日刊工業新聞』2021年9月22日付)。
東京都は、2050年までに二酸化炭素排出「実質ゼロ」の方針を打ち出しており、都営バス以外の事業者にも
・燃料電池バスの購入費補助
・水素ステーションの整備
を進めている。
2022年度には関連予算も増えており、現在都内にまだ23か所しかない水素ステーションを拡充させる予定だ。なお、軽油に比べて割高な水素購入費の補助についても予算に含まれている。
燃料電池バスにも欠点はある

エコなバスとして普及の進む燃料電池バスにも欠点はある。それは、新型コロナウイルス感染拡大への対応だ。
都営交通ではお客さまセンターに寄せられた声を月ごとに公開している。ここには、感染拡大以降、燃料電池バス内での「換気が不安だ」という意見が何度か寄せられている。
現在、都営バスでは換気装置による換気に加え、起点と終点で扉を開放して換気している。雨天時以外は、窓開けによる換気も実施している。ところが、燃料電池バスは車両のデザイン上、開閉できる窓が少なく、サイズも小さいため、換気は空気清浄装置で対応している。
現在、少ないながらも窓を開ける措置が取られているが、それでも不安を感じる人は多いようだ。通勤時間帯に燃料電池バスが来ることの多い路線を利用する人に話を聞いてみたところ、こんな意見を聞けた。
「空気清浄装置があるとはいえ、窓が小さいので空気がこもっている感じがします。最近は大事を取って、燃料電池バスが来た場合は見送るようにしています」