SDGs時代で大注目も 「燃料電池バス」に忍び寄る、利用者たちの見えざる不満
意外と歴史が長い燃料電池バス
SDGs(持続可能な開発目標)の達成が呼びかけられるなか、全国各地で導入が試みられているのが燃料電池バスだ。
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燃料電池バスは燃料となる水素を燃料電池に送り、空気中の酸素と化学反応させてできた電気を使ってモーターを動かすため、排ガスはゼロ。排出されるのは水だけのため、時代にマッチしている。東京都内を走る都営バスでは、2022年2月現在、この燃料電池バスを71両所有している。
都営バスの燃料電池車の歴史だが、実は意外に長い――。
都営バスは2003(平成15)年3月、江東区有明に「水素供給ステーション」を設置し、燃料電池バスを試験的に導入した。トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した車両は同年8月28日から、
・東京駅八重洲口~東京テレポート間
・門前仲町~東京テレポート間
の2路線を、日替わりで1日あたり3~4往復する実証実験を行った。
これはあくまで実験だったため、すんなりと導入が進んだわけではない。2004年10月には、トヨタ自動車が自社で使っていた燃料電池の乗用車で不具合が生じたことを理由に、車両の引き取り点検を実施した。このことは
「燃料電池バス運行停止」
と報じられたが、不具合の出現を含めてデータが蓄積したことで、車両の開発は進んだ(『東京新聞』2004年10月19日付朝刊)。
東京都が実証実験を経て、燃料電池バスの積極的な導入を始めたのは2014年からだ。東京都は同年11月、燃料電池バスを2025年までに10万台普及させ、80か所の水素ステーションを設ける目標を提示。同時に都営バスでの本格導入を、2016年以降とした。
なお、当時の舛添要一都知事は燃料電池バスの導入に積極的で、2020年までに都営バスへ百台を導入する構想も語っている。
これらの実験と調整を経て、都営バスで本格的に燃料電池バスの導入が始まったのは2017年3月。最初は東京駅~ビッグサイト間の運行だった。