地方都市で拡大 バス会社「共同経営」は赤字路線を救えるか? 長崎・熊本を例に考える

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長崎県営バスと長崎バスによる共同経営が4月1日から実施される。赤字路線による負担を分担したり、利便性を高めたりすることで利用者の増加を狙う。

公営+民営、長崎で全国初の試み

長崎バス(左)と長崎県営バス(画像:(C)Google)
長崎バス(左)と長崎県営バス(画像:(C)Google)

 長崎県交通局の運行する長崎県営バスと、長崎自動車の運行する長崎バスによる共同経営が、4月1日から実施される。

 共同経営は県内一部の路線を対象に実施。長崎市の東長崎地区と日見地区は長崎県営バスに、同じく市内の滑石地区は長崎バスに運行を一本化する。通勤通学の時間帯には快速便の運行を新たに始め、それと同時に、長崎バスは利用者の少ない路線の廃止・減便も実施する。

 公営バス(長崎県営バス)と民営バス(長崎バス)の共同経営は、全国初となる。バス会社の共同経営が可能になったのは、2020年11月に施行された独占禁止法特例法で、カルテル規制の一部緩和されたためだ。

 この法律は、人口の減少する地域おける企業合併や共同経営を柔軟に認めるもので、地方銀行やバス事業者を想定して定められた。合併で地域シェアが高まっても、貸出金利や運賃を不当に引き上げないことや、赤字路線の存続などが条件だ。

 これにより、バス事業者は路線や便数を事業者同士で調整できるようになったため、

・重複路線
・過疎地域

での運行を分担できるようになった。また、事業者間で収入を分け合う「運賃プール」も容認されている。

最初に手を挙げたのは熊本県

長崎市(画像:(C)Google)
長崎市(画像:(C)Google)

 実を言えば、この法律で最初に手を挙げたのは熊本県のバス事業者だった。ただこちらは、民営バスのみだ。同県では、

・九州産交バス
・産交バス
・熊本電気鉄道
・熊本バス
・熊本都市バス

の計5社が法律成立前の2020年1月、共同経営への移行に合意した。共同経営は、法律施行後の2021年4月1日からスタートしている。

 この共同経営では、同じ区間であればどのバスでも乗車できる共通定期券や、運賃のサブスクリプション化も検討されていることが注目された(『朝日新聞』西部地方版2021年4月1日付)。

 このうち、共通定期券は2022年4月1日から導入が決定している。導入によって、各社のバス路線が重なる桜町バスターミナルから県庁前までは、産交バスで平日片道105便だったものが、熊本バスや熊本都市バスに乗車できるため153便に増加。各社、便の乗り継ぎの際も1枚の定期券になる。定期券利用者は、2020年度の390万人から3%増が見込まれている(『朝日新聞』2022年3月8日付西部地方版)。

 このように、共同経営は赤字路線による負担を分担したり、利便性を高めたりすることで利用者の増加を狙っている。

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