多摩モノレール「実質37億円」負担で延伸――上下分離を超える“分担型整備”の現実性と波及効果とは
多摩都市モノレールの約7km延伸が正式認可された。総事業費約1180億円のうち、約8割は国・東京都・沿線自治体の公的資金で賄われる一方、民間事業者も運行設備投資を自己負担する独自の費用分担モデルが注目される。1980年代からの制度設計が実を結び、財政負担を分散しつつも経営リスクを適切に配分することで、2030年代半ばの開業に向けた持続可能な延伸事業の実現に道を開いた。
約1200億円で挑む延伸モデル

5月、国土交通省は多摩都市モノレールの延伸を正式に認可した。多摩地域を走るこの路線は、2030年代半ばの開業を目指し、今後工事が本格化する予定だ。
今回の延伸区間は、東大和市の上北台駅から瑞穂町の箱根ケ崎駅までの約7km。新青梅街道に沿って、七つの新駅を設ける計画となっている。沿線にはこれまで鉄道のなかった武蔵村山市も含まれ、同市にとっては初の鉄道路線の誕生となる。
工事は、東京都と運営会社の多摩都市モノレールが役割を分担する。モノレール会社は東京都が79.9%を出資する第三セクターである。東京都は総額822億円を投じ、支柱・桁・駅舎といったインフラ部の整備を担う。一方、モノレール会社は358億円を負担し、車両や電力系統、変電所、券売機などインフラ外部を整備する。
本稿では、この分担型整備モデルが持つ制度的合理性と財政負担の構造を検証する。また、都市交通政策への波及効果を分析し、他地域の鉄道延伸事業への応用可能性について考察する。