「マイカー大国」九州の悲劇? なぜ鹿児島市の道路混雑度は68%に達したのか──年間410億円の経済損失が示す財政・政策・都市設計の“三重苦
人口減と車依存が生む悪循環

渋滞と聞くと、首都圏や関西圏といった大都市圏を思い浮かべがちだ。しかし、実際には地方の中枢都市でも、平日の朝夕や週末などを中心に日常的な渋滞が発生している。
背景には、地方都市における公共交通の脆弱さがある。多くの地域で鉄道やバスの本数が減少しており、十分に機能しているとはいい難い。人口減少が進むなか、利用者の減少によって便数の削減や路線の廃止が相次いでいる。
その結果、住民は自家用車に頼らざるを得ず、道路の交通量が増加。慢性的な混雑につながっている。九州地方3県の1世帯あたりの自動車保有台数は以下のとおりだ。
・鹿児島県:約1.18台(全国33位)
・熊本県:約1.30台(全国22位)
・沖縄県:約1.28台(全国23位)
全国平均は約1.03台であり、3県はいずれもこれを上回っている。なお、全国平均を下回っているのは、東京都・大阪府・愛知県・京都府・兵庫県・埼玉県・千葉県・北海道の8都道府県のみだ。いずれも大都市を抱えており、自動車依存度が相対的に低い。
さらに鹿児島市の場合、地形的な制約も大きい。市域は桜島や周囲の山々に囲まれ、南側は鹿児島湾に面している。都市設計に自由度が乏しく、道路の本数も限られる。そのため幹線道路への依存が高くなり、局所的な渋滞が起きやすい構造になっている。
県庁所在地には、県庁や裁判所、市役所といった行政機関が集中している。加えて、大学や病院などの大規模施設も集まる傾向にある。多様な目的の施設が集積すること自体が、県庁所在地の役割といえる。
そのため、平日の日中には人口が集中しやすく、それが渋滞の一因となっている。公共機関を周辺地域に分散させることは、混雑緩和の手段として有効だ。しかし、県庁所在地に集約されているからこその利便性もあり、単純な分散は難しい。
さらに分散を進めるには、土地や費用といった新たな課題も生じる。理想は段階的な移行だが、地域全体のバランスを見極めながら、慎重に政策を進める必要がある。