「走るな」「車道に出ろ」…じゃあ、自転車はどこを走ればいいのか? 30代女性死亡事故があぶり出した道路設計の致命的欠陥とは

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自転車はどこを走れば安全なのか――。滋賀県で発生した死亡事故が浮き彫りにしたのは、制度と現実の危険な乖離だ。車道走行原則を掲げながら、インフラ整備は後手に回る。社会的損失1億円超とされる重大事故が示すのは、今こそ制度より構造に手を入れるべきという警鐘である。

地域別運用を阻む画一規制

道路(画像:写真AC)
道路(画像:写真AC)

 では、どのようにすればこの問題は解決できるのか。

 第一に、すべての道路において自転車が車道を走るという方針の見直しが急務である。日本の道路は、戦後に自動車中心の都市構造として整備されてきた。多くの幹線道路は、生活道路と機能を兼ねており、自転車の安全を確保する設計思想は希薄だ。このような状況で、欧州型の自転車車道走行モデルを単純に導入するのは誤りである。

 第二に、自転車専用レーンを整備するにしても、それは都市政策と予算編成における優先順位の見直しをともなう。日本では、道路拡幅や歩道整備には土地の取得、既存構造物の移転など膨大な費用と時間がかかる。

 だが、この投資を怠った先にあるのは、

・交通事故による社会的損失
・高齢化社会での移動手段喪失

という、はるかに大きなコストだ。死亡事故1件あたりの社会的損失は1億円を超えるとの試算もあり、結果的に整備コストを上回る可能性が高い。

 第三に、道交法を画一的に適用するのではなく、地域ごとの

・道路構造
・交通量
・周辺人口構成

に応じた柔軟なルール運用が求められる。地方都市と都市部、通学路と物流動線では、自転車が果たす役割もリスクの種類も異なる。現場に即した対応なくして、真の交通安全は得られない。

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