古都の悲鳴!? 哲学の道「砂利orアスファルト」論争再燃! 美観か利便性か、観光客と住民の願いは交わるのか

キーワード :
,
京都市左京区の散策路「哲学の道」をめぐり、舗装方法をどうするかで議論が続いている。アスファルトにするか、従来の砂利道を維持するかが主な争点だ。市は市民や有識者による検討会議を設け、期限を定めずに議論を重ねる方針を示している。

まだ読めない議論の行方

砂利道に根が張り出した桜の木(画像:高田泰)
砂利道に根が張り出した桜の木(画像:高田泰)

 哲学の道が観光名所になったのは、桜並木が四季折々の景色を見せ、ホタルが生息する自然環境が保全されていることが大きいが、もうひとつ大きな理由がある。地元の人たちが何の変哲もない疎水管理用道路に哲学の道という名称を付け、観光客の注目を集める「付加価値」を加えたことだ。

 疎水管理用道路と哲学の道では、観光客の印象に大きな差が生まれる。その結果、1987(昭和62)年に銀閣寺橋から若王子橋までが日本の道100選に選ばれた。JRグループの観光キャンペーンやマスコミにもしばしば取り上げられ、京都観光の名所に定着した。

 桜並木は貴重な生き物の生息に欠かせない存在で、あちこちで砂利道の下に根を張っていることがうかがえた。老木が多いとみられるだけに、舗装が桜並木に影響すれば、せっかく育んできた遊歩道としての価値を損なうことになりかねない。

 その一方で、哲学の道は住民の暮らしに密接しており、住民の不満や困りごとにも対応する必要がある。哲学の道の西側を走る鹿ヶ谷(ししがたに)通でベビーカーを押していた近所の母親(29歳)は

「哲学の道はベビーカーを押しづらく、観光客も多い。親子で散歩したいけど、子どもが歩けるようになるまでは行きにくい」

と語った。

 今の時点で検討会議の議論がどの方向に向かうのかは予測できない。景観や自然保護に対する視点は地元でもさまざまで、哲学の道があるからこそ商売が成り立つ人もいる。市が余計な口をはさまず、有識者や住民と情報を共有しながら理解を深め合うことが、最善の結論を見出す最良の方法なのだろう。

全てのコメントを見る