古都の悲鳴!? 哲学の道「砂利orアスファルト」論争再燃! 美観か利便性か、観光客と住民の願いは交わるのか
訪日客に人気の桜並木

京都市左京区の散策路・哲学の道をめぐり、アスファルト舗装か砂利道の維持かで議論が白熱している。市は市民や有識者による検討会議で期限を設けずに議論を尽くす考えだ。
左京区の銀閣寺橋から南へ向かい、観光客に人気の哲学の道を歩く。すぐ横を流れるのは琵琶湖疎水の分線。その東に東山が見える。4月中旬の京都市は初夏を思わせる暖かさとなり、水面に吹く風が涼しさを感じさせる。桜の満開時期ほどではないものの、京都らしい風情を求める訪日外国人観光客も少なくない。
法然院近くでは、イタリア人の団体がスマートフォンの地図を見ながら、話し合っていた。雨がぱらつき始めたからか、散策を切り上げたいようで、片言の英語で「居酒屋へ行きたい」という。
若王子(にゃくおうじ)橋で出会った大阪府吹田市の男性元教員(75歳)は夫婦で銀閣寺から南禅寺へ向かう途中。「ここを歩くと京都で過ごした学生時代を思い出す。昔のままの自然と京都らしさが残るのは貴重な財産や」と目を細めていた。
観光・景観の狭間で揺れる問題

哲学の道は銀閣寺橋から若王子橋まで疎水分線の西岸を走る約1.5kmの散歩道。もとは疎水の管理用道路だったが、京都帝国大(現京都大)で哲学を研究していた西田幾多郎教授らが20世紀の初め、好んで散策したことから、哲学の道と呼ばれるようになった。
砂利道の散策路として整備されたのは1970年代。すぐそばに銀閣寺や永観堂、南禅寺など有名寺院があり、沿道に400本を超す桜が植えられている。春の桜、秋の紅葉シーズンには大勢の観光客が押し寄せる名所のひとつだ。
概ね北半分は土日祝日の日中を除いて車が通行でき、南半分は車の通行が認められていない。市は1985(昭和60)年度、銀閣寺橋から約530mの区間をアスファルト舗装した。1996(平成8)年度にも大豊神社近くの約80mを舗装したが、市民から反対の声が出て約900mの砂利道が残っている。
舗装区間の老朽化が目立ち始めたうえ、沿線の住民から残った砂利道の舗装を求める要望が出てきたことから、市は2024年、有識者、地元住民、公募の市民らで対応を検討する哲学の道デザイン検討会議を設置した。