奈良が「オワコン」なんて誰が言ったんだよ(怒)
- キーワード :
- まちづくり
奈良市と京都市の観光競争

奈良県が策定した「奈良県観光総合戦略」(2021〜2025年度)では、観光振興に向けた方針として、以下の項目が掲げられている。
・宿泊を伴う滞在型観光の促進(日帰り依存からの脱却)
・宿泊施設の質・量の充実
・県内全域への周遊促進
・交通・道路インフラの整備
・奈良ならではの食・体験メニューの充実
・プロモーションの強化(国内・海外向け)
このうち、「滞在型観光の促進」や富裕層向けサービス、体験型観光の強化といった方針は、すでに全国の観光地が取り組んでいる。つまり、奈良県がこうした施策だけに依存すれば、他地域に埋もれる可能性が高い。
だからこそ、鍵を握るのは「交通・道路インフラの整備」である。観光地が点在する今の状況を変え、エリア全体をつなぐ必要がある。これなくして、本格的な観光の飛躍は期待できない。
奈良市が京都市と対抗するには、まず「奈良市だけが観光地」という発想を捨てなければならない。この記事で引用した各種調査資料を見ても、「奈良観光」としながら、対象が奈良市なのか奈良県全体なのか不明確なものが多かった。こうした認識の曖昧さを正していく必要がある。
そのうえで、奈良県の多様な観光資源を線でつなぎ、面として展開していくべきだ。そうすれば、滞在時間の延長と消費額の増加が同時に実現できる。
実際、奈良県は奈良市だけでなく、県全体が魅力にあふれている。筆者自身も県内各地を巡っているが、神武天皇陵や賀名生行宮など、観光客がほとんどいない場所にも、訪れる価値のあるスポットが多く存在する。
県内の周遊ルートが整備されれば、奈良は「市」ではなく「県」全体で京都市に匹敵する、魅力的な観光地へと生まれ変わるはずだ。「オワコン」などといわれている場合ではない。県全体の魅力を、地元の人々自身がもっと誇りに思ってよい。