奈良が「オワコン」なんて誰が言ったんだよ(怒)
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大仏依存に埋もれた政策不在

対する奈良市は、長年「大仏商法」と呼ばれる受け身の観光姿勢に甘んじてきたと批判されてきた。大仏商法とは、奈良の大仏に参拝に来た客が自然に立ち寄るのを待つだけで、自ら客を呼び込もうとしない奈良の商人の姿勢を指す言葉である。
もちろん、大仏商法だけが問題ではない。京都市は人口約140万人の大都市で、多様な産業基盤を持ち、新幹線や高速道路など交通インフラも整っている。これに対し、奈良市は人口約35万人と小規模で、産業構造も観光への依存度が高い。都市規模やアクセスの違いを踏まえれば、奈良市が京都市に観光で及ばないのは当然だとする見方もある。
だが、本当にそれだけが理由なのか。奈良市の観光が京都に劣るのは、構造的な制約だけが原因なのだろうか。実はそうではない。観光政策そのものに、
「長年解決されない課題」
が横たわっている。それを示すために、奈良県が公表している『奈良県観光客動態調査』を見てみる。最新の2023年版によれば、奈良県内の観光客数は次のとおりだ。
・Aエリア(奈良市・生駒市など)奈良公園周辺を含む県北部:1403万9000人
・Bエリア(法隆寺周辺)斑鳩・王寺エリア:657万2000人
・Cエリア(橿原・明日香周辺)大和三山・飛鳥地方:1623万4000人
・Dエリア(吉野・十津川など)県南部山間部:306万1000人
注目すべきは、Cエリア――橿原・明日香・宇陀など中南和(中南部地域)の観光客数が、1623万4000人に達している点だ。これは、奈良市を含むAエリアの1403万9000人を上回っている。つまり、観光客数の実態を見るかぎり、「奈良観光の顔」は奈良市ではない。
・橿原神宮
・飛鳥浄御原宮跡
・藤原京跡
を擁する中南和にこそ、奈良観光の中核があるといえるのだ。ここにこそ、奈良観光の最大の問題が潜んでいる。