奈良が「オワコン」なんて誰が言ったんだよ(怒)
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宿泊満足度「76%」の実証

2020年2月に奈良商工会議所が公表した「観光に関するアンケート調査結果報告書」によれば、奈良を訪れたことが「ある」と答えた人は87%にのぼる。訪問回数では「2回以上」が多数を占めており、内訳は「2回」が29%、「3回」が15%、「10回」が12%。奈良にはリピーターが多いことがわかる。
宿泊客の満足度も高い。「非常に満足」が27%、「満足」が49%で、合計76%が奈良での滞在に高い評価を与えている。満足の理由としては、
・接客が良かった:15%
・アクセスが良かった:11%
・綺麗だった:9%
・温泉・お風呂が良かった:8%
・観光地に近かった:8%
などが挙げられている。これらのデータは、奈良市の観光資源がコンパクトにまとまっていることが、実際に利便性や宿泊満足度の高さにつながっていることを裏付けている。リピーターの多さや宿泊評価の高さは、アクセスの良さや接客、環境整備といった要素が有効に働いている証拠だといえる。
奈良観光の満足度は一時的なものではない。奈良県立大学の村田武一郎・大森淳平両氏が2009年に発表した論文「奈良観光の評価に関する調査研究 奈良・神戸の比較を通じて」(奈良県立大学『地域創造学研究』20巻2号)でも、同様の結果が出ている。
この調査では、兵庫県在住者を対象に「奈良観光(この調査では市と県を区別せずに奈良観光と質問している)」の印象を聞いている。全体的な満足度では、「とても満足」が約22%、「ほぼ満足」が約59%。合わせて約81%が「奈良」に満足していた。特に高評価だったのが
「神社仏閣・公園・史跡・博物館等」
の項目で、約84%が「奈良が上」と答えている。奈良の歴史文化資源の質の高さが際立っている。
また、歴史資源が奈良市中心部にまとまっていることについても、「神戸と違って歴史の重みが感じられる」といった声が多く寄せられた。奈良市の落ち着いた環境や歴史的空間のゆとりが来訪者に好意的に受け止められていることがわかる。
一方で、課題も浮かび上がっている。飲食店や土産物店のサービスに関しては「神戸の方が上」とする回答が目立った。もてなし対応に関して「とても満足」は約15%、「ほぼ満足」は約51%で、全体満足度と比べると低い。つまり、もてなしに関する満足度は約66%にとどまっている。このことから、奈良市の観光産業は歴史文化資源という強みを持つ一方で、
・飲食
・物販
・サービス面
には改善の余地が大きいことが指摘されている。宿泊施設の満足度とのギャップも無視できない。本来、こうした調査は行政が積極的に実施すべきだろう。
このように、奈良市は「満足度の高さ」という強みを持ちながらも、もてなしの面では課題が残る状況が以前から指摘されてきた。その背景には、何があるのだろうか。