豪華客船バトルロイヤル! 日本船vs外国船、「富裕層争奪戦」の裏で深まる格差! 28年ディズニークルーズが日本市場を席巻する?

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日本のクルーズ業界は、商船三井クルーズや郵船クルーズによる新船投入で競争が激化する一方、価格の高さが顧客層を固定化し、業界全体の成長を妨げるリスクも抱えている。富裕層向けに特化した現状を打破し、幅広い世代にアクセス可能なクルーズの普及が求められる。

新造船ラッシュ、富裕層向けクルーズ加速

ミツイオーシャンフジ(画像:商船三井クルーズ)
ミツイオーシャンフジ(画像:商船三井クルーズ)

 日本のクルーズが盛り上がっている。

 2024年12月1日に商船三井クルーズの「ミツイオーシャンフジ」がデビューした。2025年は7月20日に郵船クルーズの「飛鳥III」が就航する。この夏、日本船社のクルーズ客船は「にっぽん丸」と「飛鳥II」の2隻だけでなく、倍増することになる。さらに、商船三井クルーズは米国の客船「シーボーン・ソジャーン」を購入し、2026年後半には日本籍船として就航する予定だ。

 日本船の新しい船が続々と登場する春、クルーズ専門誌への寄稿や客船の乗船レポートを通じて、日本のクルーズを盛り上げる活動に微力ながら関わってきた筆者(カナマルトモヨシ、航海作家)にとって、うれしい話題が続いている。ただし、全てに手を挙げて喜ぶわけにはいかない。今の気持ちは「うれしさも中くらいなりおらが春」というところだ。

 新船ラッシュの背景には、長年日本のクルーズをけん引してきたにっぽん丸と飛鳥IIの船齢が30年を超え、新造船建造のタイミングに差し掛かったことがある。正直、ここで日本の客船を終わらせる選択肢もあっただろう。しかし、両社がその選択をせずに新たな船を登場させたことには、深く敬意を表したい。同時に、日本クルーズ業界がこれから直面することにも触れておきたい。

ミツイオーシャンフジは、商船三井クルーズの前身である商船三井客船が所有していた「ふじ丸」の名前を受け継いでいる。「ふじ丸」は1989(平成元)年にデビューし、日本のクルーズ史において「元年」と呼ばれる重要な役割を果たした。それは従来の日本の客船とは異なり、本格的なクルーズ客船としての設備を備えていたからだ。そのため、その登場は「令和版・日本のクルーズ元年」として注目される。

 ちなみに、新造船ではなく、2009年に就航した米国船社シーボーン・クルーズの「シーボーン・オデッセイ」を商船三井クルーズが買い取り、改装して改名した船だ。日本船社が所有しているが、現在の船籍はバハマのナッソーで、船長も外国籍だ。シーボーン・オデッセイは元々、富裕層をターゲットにした最高級のラグジュアリー客船で、内装はデラックス。全室オーシャンビューとなっている。

 価格を見れば、そのターゲット層がはっきりわかる。2025年4月に横浜発着で麗水(韓国)・長崎・指宿(鹿児島県)を7泊8日で回るクルーズの価格は、最低57万7000円から最高226万3000円。このクルーズは基本的に2人1室のキャビンで、1人あたりの価格は1泊8万円以上となる。2025年7月の「飛鳥III」のデビュークルーズも横浜発着で、北海道の函館・小樽に寄港する6泊7日のクルーズ。こちらは1人あたり98万4000円からとなっており、1泊最低16万円以上だ。

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