豪華客船バトルロイヤル! 日本船vs外国船、「富裕層争奪戦」の裏で深まる格差! 28年ディズニークルーズが日本市場を席巻する?
富裕層ターゲットの戦略転換

日本船は外国客船のように低価格を実現できない。日本の最大のクルーズ客船、飛鳥IIは5万444トンで乗客定員872人。にっぽん丸は2万2472トンで定員392人。一方、海外のクルーズ客船はMSCベリッシマのように17万トン超で、乗客定員は4386人。これにより、一度の航海で多くの乗客を乗せられ、料金を抑えることができる。
人件費の違いも影響している。日本船は日本人スタッフが多いが、外国船は東南アジアなどの人件費が安い地域からスタッフを多く採用している。日本船は「日本人のためのクルーズ」という伝統があり、外国籍スタッフを採用することに消極的な傾向がある。そのため、人件費が高くなり、料金も高くなる。また、日本では
「クルーズはセレブのための道楽」
というイメージが根強く、長期休暇を取るのが難しい社会環境が影響している。その結果、クルーズに触れる人口が少なく、乗客層も固定化しているため、料金を安く設定するのは難しい。
もし大幅な値下げを行った場合、これまでのきめ細かいサービスが低下し、長年のファンが離れる可能性がある。外国客船では「低価格化が進むことでマナーが悪くなり、乗客の質が低下する」といった指摘があるが、こうした事態は日本船ではほとんど見られない。日本船のリピーターは、この“大衆化”を嫌っている。
日本船は今後、長期間乗り続けてくれる若い世代、特に40~50代の富裕層をターゲットにせざるを得ない。日本の富裕層は、野村総合研究所の調査によれば、2011(平成23)年から2021年の10年間で81万世帯から149万世帯(全世帯の約2.7%)に増加した。2023年の推計では、富裕層と超富裕層は全世帯の約3%に達している。
にっぽん丸や飛鳥IIは根強い人気があり、リピーターによって支えられている。しかし、外国客船に比べると、客層は固定化し、さらに高齢化が進んでいる。日本船ファンは“推しの船”しか乗らない傾向が強く、新たなファン層の開拓が急務となっている。
そのため、飛鳥IIIのような新造船や、ミツイオーシャンフジのような外国船の改装船などで注目度を高める必要がある。しかし、価格を下げることは難しいため、富裕層で今後も長期間乗り続けてくれる層へのアプローチが重要となる。
ただし、日本の現役世代は長期休暇を取りにくいため、半月から1か月の長期クルーズは現実的ではない。そのため、日本船は「5日の有給休暇を取れば余裕を持って乗れる短期旅行」を中心に提供することになる。