豪華客船バトルロイヤル! 日本船vs外国船、「富裕層争奪戦」の裏で深まる格差! 28年ディズニークルーズが日本市場を席巻する?
クルーズ業界の変革と新時代の波
1989年と2025年の「クルーズ元年」では、意味合いが大きく異なる。平成元年の「クルーズ元年」は、
「日本人の、日本人による、日本人のためのクルーズ」
が意識されていた。1980年代後半、クルーズは日本ではほとんど浸透しておらず、ごく一部の愛好者の趣味とされていた。しかし、バブル時代が到来し、欧米で盛んなクルーズを日本にも導入しようという動きが高まった。その結果、「ふじ丸」に続き、にっぽん丸や「飛鳥」といった国産クルーズ客船が次々に誕生した。
だが、バブルが崩壊すると、勢いはすぐにしぼんだ。各船は集客に苦しみ、自治体や企業、学校などのチャーターに頼らざるを得なくなった。
令和版の「クルーズ元年」は、平成元年の状況とは全く異なる。ここ10年、クルーズの世界では「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5906総トン)を運航するプリンセスクルーズが日本発着クルーズを定着させた。また、「陽気なイタリアンシップ」を標榜し、1泊1万円からという安価なクルーズを提供したコスタクルーズや、2023年に就航し大好評を得ている「MSCベリッシマ」(17万1598総トン)など、外国客船のクルーズは幅広い層に受け入れられている。
こうした外国客船が引き起こした「黒船クルーズブーム」は2010年代後半から始まり、その影響で日本船も満船状態になることが増えてきた(日本船のサイズが小さいことも影響している)。とはいえ、日本船はまだ外国船ほどの認知度や浸透度には至っていない。
日本のクルーズ人口は2023年に19万6300人とされている。そのうち、海外寄港地を含む外航クルーズが14万3400人、日本国内のみ運航の内航クルーズが5万2900人である。外航クルーズのうち、日本船社によるものは3400人に対し、外国船主によるものは14万人で、その差は大きい。
外国船は「コスパの高さ」を武器にしており、それがこれまでクルーズに触れたことのない層を引きつけている。派手な船内は外国の雰囲気が漂い、カジノなどもあり、非日常感が強い。何より船が巨大で、最低1泊1万円台から乗船できることもある。このような敷居の低さも魅力だ。
こうした「豪華客船のイメージそのもの」を知った近年のクルーズファンから見ると、日本船は「高価であり、一部の金持ちしか乗れない」というイメージが強いのは事実だ。
雑誌『クルーズ』(海事プレス社)が創刊以来30年以上実施している読者投票「クルーズシップ・オブ・ザ・イヤー」で、2025年、これまでトップを守っていた飛鳥IIがダイヤモンド・プリンセスに首位を譲った。驚くべきことに、差は160票近くもあった。この結果について同誌は、「日本発着クルーズの開始から10周年という節目の年を迎え、ダイヤモンド・プリンセスが多くの日本人に愛されてきたことが証明された結果」と分析している。また、乗客定員が飛鳥IIの3倍以上(2706人)であることも影響したと考えられる。