豪華客船バトルロイヤル! 日本船vs外国船、「富裕層争奪戦」の裏で深まる格差! 28年ディズニークルーズが日本市場を席巻する?

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日本のクルーズ業界は、商船三井クルーズや郵船クルーズによる新船投入で競争が激化する一方、価格の高さが顧客層を固定化し、業界全体の成長を妨げるリスクも抱えている。富裕層向けに特化した現状を打破し、幅広い世代にアクセス可能なクルーズの普及が求められる。

少子化進行とクルーズ縮小

飛鳥IIIのイメージCG(画像:郵船クルーズ)
飛鳥IIIのイメージCG(画像:郵船クルーズ)

 郵船クルーズと商船三井クルーズはともに2隻体制になり、キャパシティーが増加する。これにより、日本船のクルーズ需要が増えるとの楽観的な見方もある。しかし、不安な点も多い。

 2月末の厚生労働省の発表によると、2024年に生まれた子どもの数は72万988人となり、前年より3万7643人減少した。これは過去最少となる。少子高齢化が急速に進行する日本では、日本人による日本人のためのクルーズにこだわることはほぼ不可能になっている。

 富裕層は増加しているものの、日本の40~50代は就職氷河期世代を多く含んでいる。1993(平成5)年から2004年に高校や大学を卒業し、社会に出た氷河期世代の人口は約2000万人で、これは日本人口の約6分の1にあたる。働き手人口の3分の1がこの世代だともいわれている。この世代が高価な日本船に乗る可能性はほとんどないため、国内の富裕層だけに絞った市場で、日本船が競り合うことは将来的にクルーズ業界の縮小を意味する。

 また、国内富裕層の争奪戦が矛盾を引き起こす可能性がある。ふじ丸はバブル崩壊後、企業研修や修学旅行、国際交流などのチャータークルーズで多様な世代が乗船し、広く親しまれた。しかし、今後の新しい日本船は高価格であるため、幅広い世代が乗船することは難しい。新船は「3%未満の富裕層」をターゲットにしており、それ以外の人々にとっては高嶺の花となる。

「俺たちには縁のない船だよ」

2024年末、ミツイオーシャンフジのデビュークルーズ直前に横浜港で見かけた若い男性のつぶやきがその証拠だ。富裕層以外は安価な外国客船に流れ、日本船は富裕層に特化する。こうした“分断”傾向は、新船の登場によって加速し、今後ますます

「日本の客船に乗れない日本人」

が増えるかもしれない。国内富裕層だけに頼るわけにはいかないため、今後は海外富裕層の取り込みが重要になる。ミツイオーシャンフジは「世界基準の上質な“しつらえ”」と「日本の文化・食体験」を融合させ、和のテイストを強調している。これは7月に就航する飛鳥IIIにも同様の特徴が見られる。

 つまり、和の強調はインバウンド、特に富裕層の取り込みを意識した戦略だといえる。現時点では、日本船2社とも、欧米や豪州などの富裕層をターゲットにしているようだ。WEBクルーズニュースの2月20日配信記事によると、商船三井クルーズはミツイオーシャンフジのクルーズ販売を米国とカナダで開始したと報じている。

 しかし、世界のクルーズ業界で日本船社は「ノンブランド」とされる現状を考えると、アジア圏や新興国富裕層の取り込み戦略も必要になるだろう。日本船は「日本人の日本人による日本人のためのクルーズ」を長年行ってきたため、海外乗船者、特に非白人の乗客に対する日本人常連客の抵抗感も強いといわれている。

 それでも、日本船社は欧米にこだわらないグローバル戦略を取らざるを得ない時期に差し掛かっているといえる。

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