伊賀鉄道、ついに限界!? 15年間で利用客「45%減」 運賃値上げも、自治体が毎年1億円補填の現実…「忍者の街」に迫る鉄道崩壊の危機とは
年間利用客数はピーク時の3割弱

伊賀線は1916(大正5)年、地元の伊賀軌道が上野駅連絡所(現伊賀上野駅)~上野町駅(現上野市駅)間を開業した。その後、伊賀神戸駅の前身に当たる庄田駅を経由して現在の三重県名張市にあった西名張駅まで路線が伸びていた。伊賀神戸~西名張間は1964(昭和39)年、廃止されている。
戦時中の1944年、近鉄伊賀線となり、沿線住民の暮らしを長く支えてきたが、車社会の進行とともに利用客が減少に向かう。21世紀に入ると伊賀市が人口減少に転じ、利用客の減少に拍車を掛けた。2006(平成18)年度の赤字は約4億円。近鉄は自社単独での維持が困難として伊賀市に協議を申し入れ、伊賀鉄道が設立された。
施設や車両は近鉄所有のままで、伊賀鉄道が運行に専念する上下分離方式を採用したが、利用客の減少に歯止めが掛からない。近鉄が施設を保有していたのでは交付されない鉄道施設や車両の更新、維持管理に国の補助金を得るため、施設や車両を伊賀市が保有し、伊賀鉄道に無償貸与する公有民営方式を2017年度から導入した。
しかし、伊賀線の年間利用客数は2023年度で約112万人。コロナ禍の影響が残る前年度を4万人以上下回り、伊賀鉄道発足直後の2008年度(約204万人)に比べるとざっと5割強、近鉄時代のピーク時に当たる1966年度(約414万人)だと3割弱まで落ち込んでいる。
2023年度の営業収支は収入1億8100万円に対し、経費3億500万円。近鉄から伊賀市へ施設や車両が譲渡された際に近鉄の拠出で設けられた3億円の基金が枯渇したため、伊賀市が毎年1億円程度を補填して運行を継続しているのが実情だ。
伊賀市は2000年に848人あった出生数が2023年で367人に半減している。伊賀市交通戦略課は
「今後の人口減少を考えると状況は厳しいが、伊賀線は市民にとってなくてはならない路線。新たな手を考えたい」
とあきらめていない。2025年度は上野市駅のトイレ改修や関西に殺到する訪日外国人観光客の誘致検討を進めたいとしている。